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ガバナンス・コンプライアンスといえばGRCS社:グローバル化の波を受け海外展開も進める / 注目ベンチャーインタビュー株式会社GRCS
代表取締役社長 佐々木 慈和

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株式会社GRCS(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:佐々木 慈和)は、三菱UFJキャピタル株式会社、いわぎん事業創造キャピタル株式会社、イノベーション・エンジン株式会社を引受先とする第三者割当増資に加え、株式会社日本政策金融公庫からの融資により総額1.6億円の資金調達を2019年末頃に実施した。

同社は昨今問題になっているGRC(ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス)領域における複雑な課題を、テクノロジーの力を活用してシンプルに解決することを目的としている。
リスク管理体制を高度化するGRCソリューションの開発・提供や、ガバナンス体制の強化を支援するコンサルティングサービスの提供を行なっている。

今回はGRCS社 代表取締役社長:佐々木 慈和 氏に欧米に10年遅れていると言われる日本のGRC領域の課題や、今後の展望についてお話を伺った。

GRCS:ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス・セキュリティ

GRCS社の社名は(ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス・セキュリティ)の頭文字をとったものである。初期はGRCの3領域で事業を展開していたが、2013年からセキュリティ分野にも着手し始めたと言う。

「GRCSは新しいマーケットですが、すでに10年間この領域で努力を続けております。セキュリティ分野は2013年から始めました。ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス・セキュリティをテクノロジーを使ってシンプルに管理していきましょう、というのが弊社のサービスになっております」

同社が10年以上この分野に取り組んできた背景には、企業で発生する様々な問題を仕組みで解決したいという思いがある。

「社内情報の漏洩など、世の中には様々な不祥事があります。不祥事を起こさないように管理するのは、欧米では10年以上前から当然のことです。日本はまだ管理意識が低いため、当社は日本でその領域を担っていこうと考えております」

設立の背景と日本の課題

欧米に比べて日本は10年以上遅れているというGRC分野。そもそも最初にGRC領域を知るきっかけはどのようなものだったのだろうか?

「2008年頃にインドの大手のセキュリティ会社さんにGRCという言葉を教えて頂きました。『GRCとはなにか』というと経営の設計書のような、企業がどのように向かっていくか、という守りの部分のロジックを設計するというものだと分かり、興味を持ち始めました」

しかし、日本はなぜこれほど海外に遅れてしまっているのだろうか。その背景について佐々木氏は日本の責任体制に特徴があると言う。

「日本は謝罪会見がわかりやすいです。事件があったときに、謝罪会見で何人も並ぶことが多いです。一方で、海外の謝罪会見は1人しか出てきません。つまり、海外は責任の所在が明確で、だからこそ謝罪しないために努力をします。日本は曖昧で、責任者が不在です。それに伴ってGRC領域への予算が海外に比べて10分の1ほどになっています」

今後グローバル化していく中で、GRCについてしっかりとした基盤を持つことは企業が海外展開をしていく上で重要になってくる。依然として日本ではGRC市場が定義されていないが、海外の規模と比較すると今後非常に大きなマーケットになっていくと予測されると言う。

「GRC市場は日本では定義されていません。しかし、海外では定義されていて、現在2.5兆円ほどの規模があります。この領域を専業でやっているベンチャーは当時、日本に存在しませんでした。そこで、コンサルタントも製品も自社で開発して、日本企業向けにカスタマイズしたGRCを提供しますというのが弊社の明確な優位性になります」

ガバナンス・コンプライアンスの様々なソリューション

同社は様々なGRCソリューションを展開している。

GRCS社公式ホームページより

特に注目を集めているのは、某自治体や教育サービス会社などで問題になった委託先管理のソリューションである。

「委託先管理がニッチですが現在人気です。金融庁が代理店を管理してくださいという指示を出していまして、弊社はその領域のソリューションを提供しています」

今まではメール一本で管理体制を報告していたのが、本当にその報告が正しいのか、企業は証明する必要に迫られている。そして、仕組みとして正しさを証明することが世の中に求めれられているそうだ。

今後の展開と資金調達の目的 :ガバナンス・コンプライアンスといえばGRCS

日本国内でのGRCS領域の透明性や管理体制の強化は急務であると同時に、今後は日本企業の海外進出が進んでいく。日本企業は各国に対応可能なコンプライアンス体制を求められており、GRCS社は今後、グローバルに対応可能な仕組みを作り出していくと言う。

「例えばシンガポールでビジネスする場合、シンガポールの法律に準拠しなくてはいけません。今までは、日本企業が海外に進出するときに、現地の法律事務所を回って対応していました。そこに弊社がプラットフォームベースで各国の規制に対応できる仕組みを作り上げていきます。つまり弊社のソリューションを活用していただくことで、最低限でコンプラやガバナンスを達成できるのです」

「欧米は10年以上進んでいるので、データの蓄積があります。しかし、アジアはまだ遅れている。文章的な細かいいいまわしや、記述の仕方にも文化があるので、そこをチューニングして仕組みにしていきたいです」

今回の資金調達の用途は以下の2点になると言う。
1)GRCプラットフォームのさらなる開発
2)人材の確保

資金調達により、日本企業の海外進出をサポートするためのGRCプラットフォームの開発を進め、国内だけでなくアジアへの展開を進めていく予定だと言う。

「基本的にGRC特化の会社は他になくて、10年の経験があるのは本当に弊社だけだと思っています。今後は金融業界向けにグローバルコンプライアンス管理業務の高度化・適正化を実現するGRCソリューションのさらなる開発、提供を進めてまいります」

インタビュー・写真・執筆
塚田愼一