大伸社コミュニケーションデザイン社はVRに特化したソリューションも提供している。近年のVRの普及を受けて、企業向けの案件も徐々に増えてきていると言う。
「ご依頼をいただく回数は、年々増えています。また依頼内容につきましては、B2Bの案件を数多く手掛けています。VR、ARはゲーム、エンタメ系からスタートしていると思うのですが、B2Bの企業様は他社との差別化や、従来の手法では展示会で紹介しにくいところをVR、 AR を使って紹介したいというご要望が多くあります。そこに向けたソリューションをご提供させていただいています」
企業向けの案件が増えてきている背景として、企業内でのVRやARへの予算が増え始めているのだろうか?
「去年の前半くらいまでは、もともとある予算からVR領域にまわすという感じだったのですが、最近では経営層の方からのご期待が強くなって、単独で予算が付くようになってきています。案件そのものは3年前ほどから頂いているのですが、経営層の方から、VRに費用をかけても良いのでは、という声が出てきたのは、ここ半年ほどではないでしょうか」
近年の普及を受けて、VRを扱う会社は多い。同社の強みはどのようなところにあるのだろうか。代表の上平氏は2つの強みがあると言う。
「2つ側面があります。1つは技術的なもの、もう1つはお客様と直接やりとりを行うというところです。ワンストップでCG、VRに限らず様々なソリューションをご提案させていただいています」
「技術的には、分社前の株式会社大伸社の時代から60年以上の歴史があります。グループとしては長い会社で、撮影、CGはかれこれ30年近く携わっています。カメラマンなどと協力しながらクリエイターがCGを作るので、精度の高いCGを作ることができます。そのCGのベースをもとにVRを展開しておりますので、質が高く安心できる、ということでお客様にもリピートでご用名いただいている状況です」
今、VRは様々なシーンで活用されつつあるが、実際にVR、XRの強みを活かしたシーンはどの様なものがあるのだろうか。
「基本的にはプレゼンテーションがメインになりますが、大きな工場の中に機械を導入する時などにもご活用頂いています。例えば、施工前の確認は図面など様々な形で行われるのですが、実際に進めてみると、完成手前に思いもよらないアクシデントが起きて手戻りになることもあります。そのような問題を解消するためにARで図面の上にCGを立ち上げることで、施主の方の確認がとりやすいなど、手戻りがなくなるとコストカットにも繋がります。シミュレーション、事前確認など様々な業界でご活用頂いています」
大伸社コミュニケーションデザインのVR・AR技術、ソリューションの詳細はこちら
VR/ARメニュー特設サイト:https://www.dcd-vr-ar.com/
「別の分野ですと、自動車メーカーさんの新製品の開発にVR技術を活用したソリューションを提供しております。新製品の開発は通常、製品を作ってから試乗するという形です。それをバーチャルで試乗体験をしていただいて、ターゲットとなるお客様の感想をいただくことができ、コストダウンに繋がります。試作品をブラッシュアップするのが非常に重要ですので、VRで今までより早い回転率でブラッシュアップできるという活用をしていただけます」
記者も部屋の内覧や、スーパーマーケットの店内の様子をVRで体験させていただいた。
ヘッドセットを装着すると視界が真っ暗になる。しばらくして、VRが起動すると突如として目の前に大きな部屋が現れた。部屋はリビングの一室で壁際にテレビが置かれ、その前には座り心地の良さそうなソファが置いてある。VRというと映像の質が低いと思われることも多いが、同社のVRは精巧さにこだわっていることもあり、ソファの表面の布の縫い目まで見ることができ非常にリアルだった。部屋の内装は手元のスイッチを使用して、家具の色彩と昼夜を変化させることもできる。これからの時期、地方から東京の大学に入学する人も多くなるだろう。そうした時に大変なのが部屋探しだ。交通費をかけて何度も東京に足を運ぶ人も、VR技術を使用すれば東京まで来なくてもリアルに部屋の雰囲気を感じることができるようになるはずだ。
また、VRのスーパーマーケットの中ではボタンを使用することで、棚の商品を手に取ることができる。このVRでは、どの位置の商品がお客様の手に取られやすかったか、どの配置がもっとも購買に至りやすいかなど様々な調査をすることを目的としている。アイトラッキング機能を使えば、ユーザーの目の動きを記録することで、購入に至らずとも注目を集めた商品や、効果的な商品の位置を試験することも可能だ。
今後のVR関連の市場規模はどのようになるのだろうか。
「個人的には10倍ではすまないと思います。5Gがキーワードで、データが猛スピードで飛んでいくと、様々な形でシミュレーションやプレゼンテーションでデータが使用できます。B2B向けでも、VRやARのビジネスでの活用は今はまだまだ限定的なので、10倍どころではない期待があります。また、タイムリーなのですが、コロナウイルスの関係で、日本含めて中国などの展示会が中止になったときに、バーチャルでできないのか、とか皆さん考えておられます。そういうリスク回避の意味でもまだこの分野は期待できるなと思っています」
最後に同社が強化して行く予定のソリューションについてお話を伺った。主に、VRを活用することで工場の研修や、先程記者が体験していたように、スーパーの棚の位置がどのようにユーザーエクスペリエンスに影響を与えたかを調査することが、従来よりも手軽に素早く行えるという。
「これまでの調査は専門の調査会社が、専用の施設を用意してという大掛かりなものでした。しかし、お客様の要望としては新商品のパッケージをどうするかクイックに調査したい。メーカーさんは商品を流通させるにあたり、棚の高さはどれくらいが良いんだろうか知りたい。そのようなシミュレーション、調査を簡易にやりたいというご要望に弊社のVR技術でお応えできます」
「例えば工場のレーン作業のトレーニングはHoloLensを使用して効率化することができます。ここの作業はこういう形にしなさいというマニュアルが実際に出てきて、そのとおりに組み立てれば、誰でもできるというものです。導入していただくと、様々な企業様の製造ラインやトレーニングに使えるので強化していきたい分野です。また、最近はアイトラッキングのできるVRが増えてきています。それを使って体験した人がどこを何回見たか、どこが見られていたかを記録することができるので、そのような調査を進めていきたいと思います。大伸社グループには統計データだけでなく、実際に商品の使い心地や感想、どういう視点で商品を選ぶのかを調査する会社もあります。そのような弊社がグループである強みを活かして新しい調査を提案できたらと考えています」
株式会社大伸社コミュニケーションデザイン ウェブサイト
https://www.daishinsha-cd.jp/
記事執筆:
塚田愼一