――それぞれの企業概要を簡単にお聞かせください。
大崎:デリカフーズは、「農と健康を繋ぐ企業」です。特徴は二つあります。一つは外食、中食産業向けに青果物を日本全国、365日安定流通していること。もう一つは、創業当時から研究開発に力を入れていることです。会社の強みは、カット野菜の鮮度保持や品質を高く評価していただいていること。創業当時からチルドの配送網という形でお客様の開拓をしてきました。今では全国3万もの店舗に直接納品できるデリバリーの仕組みを持っています。
竹川:当社は、「野菜のライフラインをつくる企業」として、一都三県を中心に事業を展開しています。創業からは、まだ10年あまり。特徴はコンサルティング営業です。相手のPRや商品開発までをしっかり企画・提案しています。規模で言うと、5000店舗ぐらいの配送網で毎日事業を行っています。もう一つは、北海道から沖縄までの産地開拓を行っています。自社農園を持たせてもらってサラリーマン型の農業をしっかり構築することで農地の収益性を豊かにする取り組みもしています。
――青果卸会社がB2Cに取り組まれた理由は何ですか?
竹川:B2Cをやりたいという想いは、ずっと持っていました。でも、今までは右肩上がりででしたから、着手しなくても良いと思っていました。緊急事態宣言下で売上が落ち込んでいく中でも、契約農家からは野菜が届いていました。その野菜をどうにかしてあげないと来年農家に顔向けできないと思った時に生まれたのが、ドライブスルー八百屋でした。2カ月で6万人くらいの方が来場されたました。10年間八百屋をやってきて初めて消費者に売るという行動を起こした時に、社内が盛り上がったとともにお客様の声・評価がとても良かったんです。手応えを感じ、「これは消費者向けに行くべきだ」ということで、事業として本格的にやろうと思いました。ただ、自分だけ本格的にやろうとしてもすべての競合に勝てるわけではありません。「どうせやるなら、日本一を目指したい」と思った時に、大崎社長の顔が浮かび、「一緒にやりませんか」と声を掛けさせてもらいました。
――もともと、二社はどのような関係だったのですか。
大崎:ガチンコの競合でした。熾烈な戦いが続いていました。ただ、コロナ禍で当然我々も契約産地の野菜が余りましたし、我々なりに流通に野菜を載せようとやっていました。そこに竹川社長から直接電話をもらって、「ドライブスルー八百屋を、一緒にやりませんか」と言われたわけです。正直、良く電話をしてきたと思いますよ。逆を言えば、わざわざ僕に直接電話をしてきたというのは、本気の証。二つ返事で「やりましょう」と答え、我々もドライブスルー八百屋を生産地の応援として全国展開することにしました。
――どのような想いから、大崎社長にアプローチされたのですか?。
竹川:緊急事態宣言下の経営やマインドは、今考えてみても異常です。一社でできるよりももっと大きなことをしないといけない、もっと世の中に対して働きかけないといけないし、協力しあう時代なのではと考えました。どうせなら、この業界で一番大きな会社と組んで色々なことをやろうと思いました。
――ドライブスルー八百屋の反響の要因をどう見ていますか?
竹川:企画した瞬間から絶対流行るという手応えがありました。重視したのは、スピード感です。企画・構想から10日弱でスタートするなど、とにかくクォリティよりもスピードを求めました。それに、時代背景にもマッチしていました。もちろん、一社ではなくデリカフーズさんにご協力いただけたことも、大きな成功ポイントでした。
――協業を進めて行く中で何をお考えになりましたか?
大崎:非常事態宣言下では、この先ビジネスがどうなるかは全く見えませんでした。とにかく目の前の状況を打開しないといけないということで、一緒に「ドライブスルー八百屋」を展開しました。進めていくなかで、この先両社で何をやれるかを考えたのです。我々は全国にインフラを持っています。それを活用するのも面白いのではとか。各々の事業は継続させ、お客様には競争原理を働かせる一方、共有できるところは共有した方が良いと言うのが今の事業のベースになっています。
――2020年9月には、合弁新会社を設立されました。どのような経緯だったのですか。
大崎:「この先、ドライブスルー八百屋をどうするか」とか、「顧客リストも増えていたのでこれをビジネスにしたい」といったやりとりを二人でしていました。「やるなら、腹を決めて共同出資でやらないと意味がない」という話もしていました。どっちがどうではなく、「本気でやらないと面白くない」という感じでした。線引きしてしまうとお互いの役割分担になってしまいます。それをハイブリッドみたいな形でまざりながら事業をスタートさせました。
――新会社の事業内容をお聞かせください。
竹川:新会社は通販で野菜のサブスクリプションサービスを提供します。本当にこだわった野菜、農家の想いが伝わる野菜を毎月届けるサービスを展開していきます。「農業の深掘り、野菜をもう少し身近に」をコンセプトにしているので、キットで野菜が届くサービスやカットフルーツが届くサービスであったり、手軽に栄養が取れるジュースのようなサービスであったりと、野菜を身近に摂れるサービスを行っていこうとしています。
大崎:野菜を納めてくれる生産者と消費者をしっかりと繋いでいきたいです。そこから健康的なものだったりとか農業に携わるものとか、もう少し社会性の高いものも順次つないでいけたらと考えています。今、本当に農業の実態と消費者の感覚がずれています。それを正しく伝えていくことが、最終的には世の中に評価され受け入れられていく気がしています。
――新会社における強みはどこにありますか?
大崎:全国に拠点があることです。これからは間違いなく物流が鍵になってきます。特にチルドと呼ばれる冷蔵とか食品関係は、置き配ができません。管理が非常に重要ですから。最終的なラストワンマイルが、今後も宅急便会社で良いのかという問題だったり、拠点間の無駄な流通が今後も継続できるのかといったらなかなか難しいです。恐らく物流は崩壊、もしくはより価格が高くなっていくはずです。もともと我々は拠点があって全国の契約農家の野菜がそこまで届く仕組みが構築されています。新会社の会員が増えて来ると、それぞれの拠点に集まった野菜をそれぞれの拠点からお届けすることができます。もしくは、ラストワンマイルを持っている企業とのコラボレーションも可能になります。ある分岐点を越えたら我々が圧倒的な存在になれるという自信があります。
――お互いをどう見ておられますか?
大崎:竹川社長は、バイタリティと行動力が素晴らしいです。僕もこの業界で25年になり、僕自身の価値観が凝り固まっているところがあります。年齢も7つ、8つ離れているので感覚が違います。僕はそのことに対してリスペクトしており、実業にも活かしています。根っこのところでは、割と純粋なところがあり、信頼できました。あとは、僕は創業者気質ではなく、ただ出てきたものを実現するのが好きなタイプです。そういう意味では彼が考えることを僕が実現していくとこの業界が良くなっていくと思いました。
竹川:多分、気質が違うから組めているのではないでしょうか。社長同士で会社をやるのは結構大変です。
――新会社は、何を目指していくのですか?
竹川:青果物業界に新しい風を吹き込む企業になりたいです。それくらい研究開発をしていますし、技術も工場設備も持っています。すごい良いものを凄い良い見せ方でやっていけば、青果物業界を席巻できると思っています。
――最後に、2社の今後の事業方針をお聞かせください。
竹川:外食への営業を強化していき、もっともっと業績を伸ばしていきたいです。今回で農家さんとのつながり、企画とか売り方もパワーアップしました。それを活かして成長していきたいです。
大崎:この業界自体が本当に疲弊しているし、将来性も厳しいものがあります。もう競い合っている時代ではないと思っています。しかも扱っているのが、農産物です。日本の農業をもっと育てていかないといけないのに、生産者を買いたたいたり、お互い各々のビジネスモデルでお客様に安く売る時代ではありません。競い合うべきは競い合うのですが、一緒にできることはもっと一緒にやっていくべきです。どんどん仲間を集めて一緒に新しい仕組みを本気で作っていこうと思っています。