若手が圧倒的に活躍するディールの組織づくりの秘訣「スイミー経営」とは?

株式会社ディール

代表取締役社長

小野瀬 冬海

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VentureTimes

編集部

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祖母の死をきっかけに、起業家として生きることを決意

リクルートワークス研究所の発表によると、来春2023年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.58倍。22年卒が1.50倍であったので、0.08ポイント上昇したことになる。採用意欲は回復傾向にあると言って良いだろう。学生の希望を見ると、従業員5000人以上の企業を希望する学生が、18.1%も増加している。その規模に満たない企業への就職希望者数は減少しており、中小・中堅企業、ベンチャー企業にとっては、新卒採用がますます厳しくなってきている感がある。

こうしたなか、2017年に設立されたばかりでありながら、新卒採用をスタートさせた2020年新卒採用以降、毎年10名から20名もの新人を迎え入れ、平均年齢23.8歳、新卒入社比率78%、女性管理職比率100%、女性比率80%を超え、ユニークな社内制度や育成方針により、スピーディーに若手をエース人材へと育て上げているITベンチャー企業がある。それが、株式会社ディール(本社:東京都中野区)だ。一体どのような会社なのだろうか。

ディールを創業したのは、現・代表取締役社長である小野瀬冬海氏。もともとは安定志向で、将来は公務員か会社員になれればそれでいいとおもっており、夢もやりたいことも特になく、もちろん起業するなど考えもしなかったという。しかし、20歳のときの人生のターニングポイントと呼べる出来事との遭遇が、ディールを起業するきっかけになったと言う。

「父は単身赴任で、母も多忙だったため、幼少期の頃から祖母が私の面倒をよく見てくれていました。しかし私が20歳のとき、祖母が交通事故で他界したのをきっかけに、命や人生について真剣に向き合うようになりました。正直、最初は加害者を恨みました。でも、もしかしたらその時、その場所にいたのが自分だったら、死んでいたのは自分だったかもしれない。そう考えたら自分自身に矢印が向かうようになりました。自分はいつ死んでもいいと思えるような生き方ができているのか?と、自問自答しました。そして、出た答えが、死んでいった祖母のためも、一度切りの人生、何か大きなことを成し遂げたい、そう思うようになったんです」

小野瀬氏は、内定をすべて辞退。何をしたら一番しっくり来るかを模索するために、さまざまなジャンルの偉人たちの伝記を読み漁った。その中で最も心に刺さったのが起業家という生き方。事業を通して世の中にインパクトを与えて、経済を回し、社会貢献もできる。それらを全て実現できる職業は他にはないと判断した。

「就職先に、当時まだ社員が10人程度しかいなかった、名もなきITベンチャー企業を選んだのもそのためです。30代の若い創業社長と20代の新卒の若手社員が『上場する。業界シェア日本1にする。』と豪語していました。そんな社長や先輩たちに憧れて、この人たちについていきたい、ここなら圧倒的に成長できる、そう思いました。なので、その会社で頑張って活躍していずれ独立しようと考えました。実際、その会社は上場を果たし、業界シェア1位の会社となりました。社長が直属の上司だった時期もあり、小さな会社が上場するまでの過程を傍で見ていて、自分も頑張れば上場企業を0から作れるかもしれないと考え、ディールを仲間と二人で立ち上げました」

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長期的に顧客の成功を支援するために、フロービジネスをストックビジネスに転換

ディールが掲げる企業理念は「顧客を成功に導く」だ。目の前のお客様に日々向き合い、求められるサービスをスピーディに開発・提供することで、顧客の課題を解決し、成功に導くことを目指している。主な顧客は、D2C(EC・単品リピート通販)企業。大手から中小・スタートアップ企業まで規模はさまざまだ。

「創業当初は、主に代理業務などのソリューション事業から開始しました。D2C・EC通販企業様から寄せられる要望や課題にお応えし、その都度解決するといったフロービジネスを展開していました。ただ、これだと労働集約型で人や労働時間に依存しやすい単発の取引になってしまい、限界があると思ったんです。また、代理業といった自社サービスを持たない事業では、私1人でもできてしまうし、1人では実現できないことを会社という組織で実現させたくて起業したのだから、せっかくなら自社サービスを持ち、短期的ではなく長期的にお客様の成功を支援できる事業にしようと考え、自社サービスのSaaS事業(Software as a Service:サース)を主軸としたストック型のサブスクリプションモデルに転換しました。」

現在の主力となっている自社サービスのSaaSプロダクトが2つある。1つは、購入者のレビューやInstagram投稿のUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)をLP(ランディングページ)やECサイトに活用するUGC活用ツール「UGCクリエイティブ(UGCCREATIVE)」。そして、もう1つがキャスティングからインフルエンサーマーケティング、LPO(ランディングページ最適化)まで一気通貫で支援するUGC創出ツール「ECキャスティング(ECCASTING)」だ。コロナ禍でのEC市場の拡大もあって、これらは今300社以上ものD2C/EC/単品通販企業などに利用されている。

「我々の強みは、カスタマーサクセス力です。SaaSのサブスクリプションビジネスは、ただツールを提供して終わりではなく、むしろ取引が始まってからが重要だと思っています。実際、当社のカスタマーサクセス担当が、EC/D2C事業の立ち上げからLPやECサイトの制作、芸能人のキャスティング、広告に至るまでを総合的にご支援させていただいております。」

もう1つの強みが働いている人だ。人材の採用・育成・活気には特に力を入れており、お客様を成功に導けるEC/D2Cのプロフェッショナル人材が揃っている。一般的に言って、SaaSプロダクトだと機能や価格などで違いを打ち出して行くのはどうしても限界がある。それであれば、顧客の立場からすると、仮に全く同じ価格で機能もほぼ同程度のSaaSなのであれば、より優れた人と取引をしたいと思うはずである。そういう意味では、人材の採用レベルも高く、優秀な人材が数多く在籍していることが、ディールの最大の競争優位性となっている。

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採用・育成・活気で、若手の女性がバリバリ活躍する女性活躍企業

「しかも、営業、カスタマーサクセス、エンジニア、バックオフィスなどの部署や職種問わず、若手の女性社員がやりがいを持ってバリバリと活躍してくれています。もともと、事業内容も化粧品・健康食品・食品・アパレルなどのEC/D2C企業向けにSaaSやソリューションを提供している会社なので、女性からの応募も多いです。また、平均年齢23.8歳、新卒入社比率78%、女性比率80%、女性管理職比率100%で、若くて素直なだけでなく、メンタルも強く成長意欲も高い、ベンチャー気質に溢れています。私からやる気を出しましょうなんて一言も言ったことはないんですよ(笑)。私が何も言わなくても最初からやる気があって、バリバリ一生懸命よく働く社員が本当に多いんですよね。」

最初から結果的に今の社風になっていったようだ。

「女性が多い会社はよく働きやすさをアピールにしていることが多いが、ディールの場合逆なんですよ。むしろ女性が男性に負けないぐらいバリバリ働きがいを持って若くして管理職として活躍している。それならばこれを強みにしてアピールポイントにしてしまおうということで、モチベーション高く働いてくれる女性社員をロールモデルにして、彼女たちに憧れる新卒の女子学生を採用しようと考えたんです。具体的には、新卒の女子学生と1年か2年しか年齢が違わないのに、リーダーやマネージャーとして頑張ってくれている女性社員を主役として打ち出した採用活動を展開しています。その方が、働く姿をイメージしてもらいやすいからです」

また、小野瀬氏は迎え入れた新入社員を育成するためにも、現場には一切介入しないことにしている。社長ではなく、社員が主役の会社にしたいからである。

「2023年卒の内定式にも私は出席していません。22年4月に入社したばかりの女性社員が、挨拶を含めすべて取り仕切ってくれました。『本当に、この会社は社員が主役なんだ』と証明したかったからです。自分よりも1つ上の先輩の姿は、内定者にとって身近であったでしょうし、『先輩のようになりたい』と思ったはずです。そういう狙いもあって、私はとにかく黒子に徹し、社員を光らせるようにしています」

採用・育成に加えて、活気をキーワードにしているのも、ディールらしさだ。社員が伸び伸びと働ける環境づくりに力を注いでいる。それを支える制度もかなりユニークだ。
「毎月のチーム目標を達成してもしなくても飲み会費用を補助していて、達成したチームには飲み会の補助額を増額させ、さらに翌日の午前休もプラスする達成マンス制度。おしゃれな社員を全力で称賛するお洒落制度。クライアントの化粧品や健康食品などを賞品としたじゃんけん大会を行う美容健康促進制度などもあります。おかげでめちゃくちゃ活気づいています。もう、毎日が学園祭の前夜祭のような感じです」

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このタイミングだからこそ、さらなる挑戦に挑む

そんなディールでは、今さらなる成長に向けてチャレンジを加速させている。大型の資金調達を一切せず、1年目から利益を積み上げ、黒字を維持するなど堅実経営を続けてきたが、人材も順調に育ってきただけでなく、D2C×SaaSを軸としたストック型のサブスクリプションビジネスで収益が高まってきたこのタイミングだからこそ、敢えて思い切った勝負に出ようというのだ。

「守りに入って挑戦することをやめたら停滞、そしていずれ衰退します。我々はベンチャー企業です。既存の事業が順調な今だからこそ、敢えてこれまで以上に大きなチャレンジをする予定です。これまでの5年間は序章に過ぎず、むしろ創業6年目のこれからが勝負だと思っています。そのため、ここ1、2年は戦略的な先行投資期間中と定めており、まさに勝負の年といえるでしょう。同時に、日本を代表するような偉大な会社を創りたい、という創業当初からの目標を実現させるためにも、まずは、通過点として上場させることも視野に入れています。」

もちろん、スイミー経営をビジョンに掲げる小野瀬氏にとって、上場はあくまで通過点でありゴールではない。最終的には、1万人を超える日本を代表する会社を作り、スイミーのような会社をつくりたいと社内外に公言している。

「会社とは、一人ではできないことを実現させる場所だと思っています。私一人では日本を代表するような偉大な会社はつくれない。でも、社員が100人、1000人、1万人と増えていけば、大きなことを成し遂げることができる。だからこそ、同じ志を持った多くの仲間たちがどうしても必要なのです。私の役割は、スイミーで言うところの目になること。会社の方向性を示すことぐらいで、あくまで社長の私もたくさんのスイミーの中の1匹にすぎないのです。同じサイズです。自分1人では実現できない、無力であるとわかっているからこそ、同じ志を持った仲間が必要なのです。ディールの社員たちとだったら実現できる気がする、そう本当に思っています。」

ディールが新たな仲間として迎え入れたい人物像は、シンプルだ。一番の採用方針は、「素直で可愛いやつ」。素直で元気で明るくて、笑顔が素敵で、人柄が素晴らしい。そんな人であってほしいと定義付けている。

「もう一つは、『何をするかよりも誰と働くか』に共感していただける方です。社員の人柄、人間力が自慢です。本当に人格者と呼べる素敵な社員が集まっている。それが私にとって一番の誇りです。だから、就活生には『うちの社員に実際に会ってほしい』、そう思っているからこそ、社員をどんどん前に出させて、主役にしているのです。」

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自分の人生を自分で決め、正解にしていく

最後に、小野瀬氏に会社選びの視点を聞いてみた。
「私が内定を辞退して、『設立6年目のベンチャーに入る』と言ったら、周りから笑われたり、批判されました。でも、結果的にその会社は上場しました。そういう意味では、1%の人材になりたいなら、99%の人がしない選択を敢えてすることです。もちろん、選択するだけでなく、自分の選んだ道を自分自身で正解にすることができた時に、初めて1%の人材になれます。自分の人生を自分で決める、そして自分で選んだ人生を自分で正解にしていく。そんな生き方に共感いただける方と一緒に働きたいですね。

取材協力

株式会社ディール

住所:〒164-0012
東京都中野区本町2-1-8
YS Garden 3階
HP:https://deel.co.jp/

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