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テクノロジーは日本のものづくり市場にどのような変化をもたらすのか / プラットフォームの未来を語るレヴィアス株式会社 代表取締役 田中慶子
国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」 GMOペパボ株式会社 minne事業部 部長 新井正樹

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがあるだろうか。全てのモノがインターネットに繋がり、お金はデジタルに変化し、人工知能が社会インフラを支える、そんなデジタル化された時代が到来することを予期する概念だ。

全てのものがデジタル化されるという潮流は、年々強くなっている。VentureTimesは、様々なベンチャー企業の代表者を取材している中で、このDXの波を強く感じてきた。どの企業もDXを念頭におき、近い未来に対してどのような事業の在り方があるのか、模索を続けている。
そこで弊社は、DXについて、各業界をリードする企業がどのような取り組みを行っているのかを取材し、未来へ向けての考察として読者にお届けする。

本企画では、DXの最前線に立つゲストとして、AI、FinTech、ブロックチェーンなどの先進技術の開発を行うレヴィアス株式会社代表取締役の田中慶子氏を招き、様々な領域でトップを走る企業の代表者様と今後のデジタル化社会について語り合う。

今回は、ハンドメイド作品を「買いたい人」と「売りたい人」をオンラインでつなぐサービス「minne(ミンネ)」をはじめとする様々なインターネットサービスを運営するGMOペパボ株式会社 執行役員 兼minne事業部 部長である新井正樹 氏との対談が実現。

10年前までオフラインでの展開が中心だったハンドメイド市場をどのようにオンライン化したのか、そしてコロナ禍において今までリアルで体験できたものをどのようにDX化するかについての議論が行われた。

GMOペパボ株式会社:国内最大のハンドメイドマーケット「minne」を展開

記者:
GMOペパボ株式会社minne事業部の新井様から、御社の事業についてお聞かせいただけますでしょうか。

minne 新井部長:
私たちGMOペパボ株式会社は、個人から法人まで幅広い層に向けたインターネットサービスを多数提供しています。その中の一つである国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」はハンドメイド作品を販売したい作家・ブランドさんと、作品を購入したいという人をつなぐマーケットプレイスです。現在68万件(※)を超える作家・ブランドさんによる、1203万点(※)以上のアクセサリーやステーショナリー、生活雑貨、食品などのハンドメイド作品が展示・販売されています。
※2020年7月末現在

「minne」が誕生した経緯については8年前に遡ります。2010年前後に全国でハンドメイド・クラフト作品に注目が集まっており、各地で手づくり市が増えていました。しかしハンドメイド市場自体はオフラインが中心であり、インターネットを通じての売買はまだ未成熟の状態でした。そこで地理的、時間的制約をこえて、全国の方がハンドメイド作品を安心してネットで売買できるようにしたい、という考えのもとで「minne」はスタートしました。

記者:
ありがとうございます。続いてレヴィアス様からも、御社の事業についてお聞かせいただけますでしょうか。

レヴィアス株式会社:独自の金融プラットフォームを開発

レヴィアス 田中代表:
よろしくお願いします。弊社は2018年に設立したレヴィアス株式会社と申します。ブロックチェーンやAIを、社会に既に存在する既存サービスと融合し、ユーザーの方が便利になる新しいイノベーションを起こしたいという理念のもとで設立致しました。
金融商品がデジタル化する市場を見込んで研究開発に取り組んでおり、日本初のブロックチェーンデータを活用した金融イノベーション「J-STO」を実装し、金融庁の規制に則ったプラットフォームの開発を行っています。年内には金融商品取引業者様やエンタメ系の企業様にプラットフォームを使用していただけるフェーズに入ろうとしています。

金融領域のDXを進める難しさ

記者:
2012年からGMOペパボ様が「minne」でハンドメイド作品のオンラインマーケットを切り開いてきたように、レヴィアス様は金融の世界を切り開こうとされているのですね。現状、金融の領域のデジタル化にハードルはありますか。

レヴィアス 田中代表:
とても大変です。弊社は有価証券の電子化に取り組んでおり、他の金融商品取引業者様に活用していただける基盤を作っています。そして、この基盤がどのようなサービスに使われて、エンドユーザー様にどのようなメリットをもたらすのかを注視しています。規制にしっかりと準拠した上で、エンタメ領域や一般社会の身近な部分に弊社のサービスが活用されるというのが目標です。

minne 新井部長:
なるほど。興味深いですね。

作家と企業をつなぐ「minne」の新たな取り組み

レヴィアス 田中代表:
「minne」は個人だけでなく企業も参加できるのでしょうか。

minne 新井部長:
はい、「minne」では現在個人の方だけではなく、ものづくりを応援するセレクトショップや人気スイーツ店など企業さんもご出品いただけるようになっております。また「minne」では『minneとものづくりと』というメディア事業も行っており、作家さんと企業さんのコラボレーション企画も実施しております。PRしたい企業のニーズと作家さんの発想・技術がマッチし、創造的な企画がたくさん実現しています。

記者:
とても面白いですね。最近はマーケティングもSNSが主流になって、インスタグラマーの方に商品をPRしていただく例も増えています。「minne」は、企業が作家とそのファンと一緒にPRができる、有益なプラットフォームだと感じました。これからもマーケティングにおいての価値が高まりそうです。

minne 新井部長:
作家・ブランドさんにうかがうと、「minne」では取引完了後、購入者からのレビュー比率が他社サイトさんと比べ非常に高いそうです。買った人が実際に使ってみて、こんなふうに使っていますと報告してくれる。そのような形でファンと作家さんの交流が生まれ、コミュニティが形成されています。

また「minne」はマーケットの成長とともに作品流通の内訳も変化しており、ものづくりにおいて欠かせない道具、素材の販売が全体の10%以上を占めています。そして素材を購入しているのは作家さんたちが中心で、「minne」で購入した素材で作品を制作し、「minne」で販売するという循環も生まれています。先ほど一般企業と一般消費者との間に作家さんが入るマーケティングの話がありましたが、作家さんが独自のセンスでセレクトした素材も人気がありますね。

レヴィアス 田中代表:
化粧品メーカーさんとのコラボを拝見したのですが、すごく素敵なコンテストでした。このように作家さんと企業がコラボして経済を活性化するのは素晴らしいと思います。

コロナ禍のもと、オンラインハンドメイドマーケット「エアハンマケ」を開催

記者:
「minne」ではオンラインのイベントも開催されると伺いました。

minne 新井部長:
そうですね。「minne」ではハンドメイドマーケット、略して「ハンマケ」という大規模販売イベントを、2016年より毎年オフラインで開催してきました。今年はさいたまスーパーアリーナで開催予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止せざるを得ませんでした。

そこで発想を転換して「ハンマケ」をオンライン上でできないかと考え、ユーザーさんがSNSで発信していた「エアハンマケ」という造語を、ご本人の許諾を得てイベントのキーワードと企画の総称として使用させていただくことにしました。
イベントの特設サイトでは、オンライン上で参加する皆さんが楽しんでいただけるよう、架空の会場マップを作って公開したり、作家さんご協力のもとライブ配信なども行いました。この「エアハンマケ」は手探りな状態ではありながらもたくさんの方にご参加いただくことができ、ライブ感も出て盛り上がったので、今後もオンラインイベントの取り組みは継続していきたいと考えています。

記者:
DXやVRの発展などもあり、「エアハンマケ」は国際的なオンラインイベントになっていきそうです。

minne 新井部長:
そうですね。先程レヴィアス様のお話をうかがって感じたのですが、レヴィアス様と弊社の共通点はプラットフォームだと思います。「minne」の場合は作家・ブランドさんそれぞれのサイズで事業成長できる活動基盤であることが、私たちの価値の1つと考えています。また購入した方にも、ものづくりへの興味や創造が広がる体験基盤であってほしい。オンラインイベントもしかり、作家さんたちやファン、さらにそれを応援する企業も一体となって成長する経済圏を目指しています。

オンラインマーケットでどのように経済圏を作り上げるか

記者:
レヴィアス様が切り開こうとしている金融のデジタル化は世界的に見ても未開拓の領域だと思います。そうした金融のデジタル化が進めば、例えば「minne」さんのイベントが国際的に行われる際に、その決済やポイント活用などをよりボーダーレスに行える、独自の経済圏が作れるという未来もあるともいます。

レヴィアス 田中代表:
そうですね。例えばポイント、商品券を活用しようとすると金融商品取引法に該当します。経済圏を作りたいと考えたときに、法律に則った土台がないと社会に実装されません。そして規制を遵守したユースケースを生み出すことからしか、社会実装まで進まないと思います。
まずユースケースを我々のようなベンチャー企業が作り上げて、その中から良いものを大手企業様に活用して頂き、社会に実装するという流れが必要です。弊社は役割分担をした中で、社会に適応した見えない土台の部分を作っていきたいと思っています。
また、DX化が進んで、好きな商品や、好きな作家さんに投資するような未来を考えることもできます。例えば作家さんが何か新しい商品を作りたいという時に、応援してくださるファンの方に投資家になっていただく。そうすると投資家の年齢層が広がり、女性の投資家さんも増えてくるのではないかと思っています。

記者:
伝統工芸など費用のかかるものは先にファンから資金を募るというアイデアを聞いたことがあります。

レヴィアス 田中代表:
現状ではそれに近いものでクラウドファンディングがありますが、購入型、寄付型のクラウドファンディングは投資型に比べると単価が低くなってしまいます。また応援するときに買い切り型だとリターンをもらって終わりですが、それがもし世間で注目を集めた時に価値が上がり、株式と同じようにみんなで分かち合う仕組みがあると、よりお金の集まり方が変わると思います。

日本と海外をつないで体験を提供する「minne」

レヴィアス 田中代表:
「minne」を活用することで海外のお客様が日本のハンドメイド作品を購入することも可能だと思うのですが、今は国内の購入者様が多いのでしょうか。

minne 新井部長:
現在購入者は国内の方が中心ですが、海外の方も少しずつ増えてきている印象です。

レヴィアス 田中代表:
なるほど。今はコロナウイルスの影響で旅行ができません。しかし日本の手作りの物は海外から非常に人気がありますので、例えばVR上で日本を旅行して、お店に入ってお土産を買うという流れを再現できたら面白いですね。日本でしか買えないものが欲しいというユーザー層に「minne」や、「エアハンマケ」を活用していただけそうです。

minne 新井部長:
実は「minne」上でも旅行気分を味わっていただくことができます。68万人近くの作家・ブランドさんは全国にいらっしゃるので、全国各地の伝統工芸品や名産品を「minne」で見て、買うことが出来ます。実際に各地に足が運びづらい今だからこそ、現地の伝統工芸品や食べ物で楽しんでいただきたいと思っています。

DXとその未来に向けて

記者:
DXが進むと他のソリューションとも連携して新たな形が生まれそうですね。では最後に改めて、「minne」の未来への抱負を伺えますか。

minne 新井部長:
やはり我々は作品売買のマーケットというだけでなく、ものづくりを双方的に支援するプラットフォームでありたいと考えています。ハンドメイド作品を売買することに加えて、イベントを開催しリアルの交流を促進したり、手作りを楽しむワークショップを開催するなど、様々な活動ができる場所でありたいです。

一方で購入者さんにとってはただ単に作品を買うというだけでなく、クリエイティブなマインドが広がるような体験の基盤であって欲しい。「minne」が2012年にスタートしてからずっと使ってくださるユーザーさんはライフステージがどんどん変化し、買いたいものも変化していっています。かつてはminneで自分用にアクセサリーを買っていたかもしれませんが、今はお子さんが生まれて食卓に並べるものやベビー・キッズアイテムなど家族のために何かを買いたいかもしれない。そのお客様のライフスタイルや背後にあるものに常に寄り添えるようなサービスを目指します。

「minne」はものづくりの領域ですが、GMOペパボとしては金融を含めて様々なセグメントを持っています。「minne」以外にも「SUZURI(スズリ)」という、画像1枚でTシャツやスマホケースなどのオリジナルグッズを在庫管理等のリスクなしに作成・販売できるサービスや、ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ 」なども手掛けています。

実は弊社は6月1日から在宅を基本とする勤務体制になりましたが、GMOペパボのパートナー(社員)が大事にしていることの一つである「みんなと仲良くすること」を実践するため、「人間らしさ」を重要視しています。例えば、弊社のエンジニアの一人が有志でこれまで皆が集まっていた共有スペースを完全にVR上に再現し、VR空間で集まることができる場所を作りました。また、リモート採用で一回もオフィスに来たことのないパートナー(社員)に対しVR上でバーチャルオフィス見学も行いました。テクノロジーを活用して、働き方をもっとおもしろくできると思っていますし、取り組んでいきたいです。

記者:
そのように社内でVRを導入されている企業様は大変少ないと思います。素晴らしいお取り組みですね。
では、レヴィアス様も最後に一言お願いします。

レヴィアス 田中代表:
私自身も、こだわりのある一点ものの商品や、信念がある作家さんの作品を買いたいと思うことが多くあります。作ってくださった方のお気持ちがこもっていたり、触った時に心が動かされるものを買うと、大事に長く使うようになります。

レヴィアスとしては金融の領域でデジタル化を促進しています。日本の経済を考えますと、少子高齢化社会になり、企業の成長速度も遅くなっていきます。そこで今ある金融や投資ではない、新しいものが動き出すことで日本の経済が発展するはずです。弊社は金融のデジタル化とプラットフォームの開発を通じて、これらを社会に実装し、日本の経済が発展するように努力したいと思っています。

記者まとめ

いかがだっただろうか。今回の対談では両社ともDXの促進という共通点を持っていた。レヴィアス株式会社は規制に則って人々の生活が便利になる金融プラットフォームを、GMOペパボ株式会社は「minne」というサービスでハンドメイドマーケットのオンライン化を促している。さらに「エアハンマケ」というオンライン上のイベントを展開し、コロナ禍で人と人の交流が難しくなっている中で、DXにおいてこれに解をもたらそうとしている。GMOペパボは、在宅勤務を基本の勤務体制とするほか、スモールビジネスの支援を行っており、今後を見据えた取り組みをおこなっていると感じた。両社の今後の動向に注目したい。

インタビュアー:ルンドクヴィスト・ダン
執筆:塚田愼一