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ウィズコロナの時代に音楽業界のDXを考える / アーティストに求められる新たな形とはレヴィアス株式会社 代表取締役 田中慶子
株式会社SKIYAKI 代表取締役 小久保知洋/ 執行役員 福池悟 

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがあるだろうか。全てのモノがインターネットに繋がり、お金はデジタルに変化し、人工知能が社会インフラを支える、そんなデジタル化された時代が到来することを予期する概念だ。

全てのものがデジタル化されるという潮流は、年々強くなっている。VentureTimesは、様々なベンチャー企業の代表者を取材している中で、このDXの波を強く感じてきた。どの企業もDXを念頭におき、近い未来に対してどのような事業の在り方があるのか、模索を続けている。

そこで弊社は、DXについて、各業界をリードする企業がどのような取り組みを行っているのかを取材し、未来へ向けての考察として読者にお届けする。

本企画では、DXの最前線に立つゲストとして、AI、FinTech、ブロックチェーンなど先進技術の開発を行うレヴィアス株式会社の代表取締役である田中慶子 氏と小町博幸 氏が、様々な領域でトップを走る企業の代表者様と今後のデジタル化社会について語り合う。

今回は、自分の個性を強みに表現活動をして生きていける時代を見据え、誰でも無料で簡単に作れるオールインワン型ファンメディア「Bitfan」を運営する株式会社SKIYAKIの代表取締役 小久保 知洋 氏/執行役員 福池 悟 氏との対談を実現。

コロナウイルスの影響下でアーティストとファンの関係性をどのように再編していくのか、またプロジェクトの証券化やその課題についての議論が行われた。

※本インタビューは2020年7月にオンラインにて行いました。

株式会社SKIYAKI:オールインワン型ファンメディア「Bitfan」

記者:
本日はよろしくお願いします。まず始めに、株式会社SKIYAKI様の事業内容をお教えいただけますでしょうか。

SKIYAKI 小久保 代表:
はじめまして。株式会社SKIYAKI 代表取締役 小久保 知洋と申します。

弊社の主なサービスはオールインワン型ファンメディア「Bitfan」です。あらゆるアーティストやクリエイターが自分のファンメディアを持つことができ、ファンは好きなアーティストのSNSやファンクラブコンテンツなど、あらゆる情報をひとまとめに楽しむことができます。

2020年の12月末時点で総会員数は378万人以上、サービスも700種類以上あり業界トップレベルです。

主要サービスである「Bitfan」にはアーティスト活動/ファン活動に必要な多くの機能・サービスが搭載されており、ファンクラブ・EC・チケットの販売に加えて、ライブ制作やファン旅行の企画など包括的なサービスを提供している、新時代のファンマーケティング・プラットフォームです。

Bitfanには以下の3つの主な特徴があります。

  1. 各種SNS(Twitter、Instagram、YouTube、Facebook)と連携し、タイムラインを一元化する。
  2. 「ハート」を購入してSNSに投稿することでアーティストを直接支援する。
  3. フォローしているアーティストのSNS投稿の閲覧、Spotifyの再生、Bitfanコンテンツの閲覧、ハートの送付など、いつものファン行動や応援がポイントとして貯まる。

上記3つの特徴によってファンの「熱量」を可視化し、アーティストとファンの新たな関係性を作り出そうとしています。

最近ではコロナ禍においてアーティストを支援するために、ライブ配信機能やラジオ配信機能も開発・実装しました。

Bitfanを活用してチケットを購入する、ライブを視聴する、Bitfanのファンコミュニティ有料会員限定ライブ配信をするなどオールインワンでサービスを提供しています。

記者:
ありがとうございます。
Bitfanは単なるライブ配信プラットフォームではなく、アーティストとファンの関係性を主軸にしたSNSに近いのでしょうか。

SKIYAKI 小久保 代表:
Bitfanの基本はファンクラブ、ファンメディアを構築するプラットフォームです。アーティストの方がサイトを作成してコンテンツを投稿し、ライブスケジュールの告知もできるので、SNSというよりもオフィシャルサイトに近いです。

アーティストの公式サイトは昔からありますが、基本的なプロフィールとスケジュールだけが掲載されていました。一方で日々の発信はTwitterやInstagramなどSNSに投稿されていて、情報が分散しています。そこで1つのフィードに情報をまとめることで、ファンの方に届きやすくなると考えてBitfanを開発しました。

レヴィアス株式会社:金融商品の手続きをデジタル化

記者:
ありがとうございます。続いてレヴィアス様の事業内容をご紹介いただけますでしょうか。

レヴィアス 田中代表:
レヴィアス株式会社代表の田中と申します。弊社は3年目のスタートアップ企業で、フィンテックの領域でイノベーションを起こすことを目標としています。

様々な投資商品、有価証券はいまだに紙面で手続きされており、個人情報も郵送で確認されています。それらの手続きをAIとブロックチェーンの技術を活用してデジタル化する研究開発をしています。

コロナ禍で音楽業界に求められるサービスのあり方

記者:
コロナウイルスの影響でライブ配信が注目を集めており、SKIYAKI様のサービスは今まさに求められていると感じます。

SKIYAKI 福池 氏:
日本の音楽業界は海外のサービスに比べてITの導入が遅れていると言われますが、コロナの影響で2月から急速に変化しました。

どの企業もライブ配信に取り組んでおり、どのようにテレビ番組と差別化するのか、ライブをオンラインにした時に満足をどのように高めるかなどが課題です。

弊社もクライアント様のご要望を受けて3,4月からライブ配信をしていますが、やはり実際のライブやツアーと同じようにはいきません。

音楽業界の収益の中心はあくまでもライブですので、ECや通販である程度コロナ特需を受けているIT企業はあっても、エンタメ業界全体で見ると急速に規模が縮小しています。

コロナ禍が終息する見込みが立たない状況でライブ配信のトライアンドエラーを繰り返している状態です。

記者:
ライブ配信が普及するとはいえ、今までのサービスを代替できるレベルではないということでしょうか。

SKIYAKI 福池 氏:
おっしゃる通りです。ウィズコロナという言葉通り、コロナと共存できるアーティストであるためには、ブランディングの変化が求められています。

具体的にはアーティストの皆さまが、自分たちのブランドにどのプロダクトが適しているか自身で見定める能力が必要です。

アーティストと証券の可能性

記者:
SKIYAKI様はファンクラブを様々なサービスと連携して包括的なソリューションを提供されており、レヴィアス様は金融領域のデジタル化を促進する研究開発を行っておられます。
音楽と金融がDXによって融合していくことで新たなサービスが生まれる可能性を感じました。

レヴィアス 田中代表:
そうですね。例えば、若い人がアーティストのプロジェクトに出資するという、新しい金融商品のアイディアがあります。

投資家は何%の利益が返ってくるのかを大事にしますが、ファンの方は応援したいという気持ちが大きいです。日本の投資リテラシーは世界基準で見ると高いとは言えないので、投資リテラシーを底上げできるいい機会になるかもしれません。

レヴィアス 小町ディレクター:
少し前にNBAのプロバスケットボールプレイヤーが自身の契約金の一部を担保にしてトークンを発行しました。これはデジタルだからこそ可能で、アメリカでは既に導入が進んでいます。

アーティストの場合も、自分のプロジェクトをファンと一緒に盛り上げ、プロジェクトで利益が出たら応援してくれたファンの方にリターンが出るという形をデジタル化できたら面白いです。

音楽と金融が重なる時に生じる課題

記者:
新しい発想や動きが出てきそうですね。ライブやミュージックビデオをファンと共同出資で作ることも可能でしょうか。

SKIYAKI 小久保 代表:
そうですね、ただ前提として、ファン心理はジャンルによって大きく異なるとも感じております。

支払った金額によってサービスが変化すると不満を持つファンの方もいらっしゃいますし、逆に見返りを求めないファンの方も多くいらっしゃいます。

例えば月額300円のサービスなのに、アーティストを応援したいから今月は3000円払いたい、といったファン心理を伺ったこともあります。これは精神的なものであり、自分の資産として売買したいとは思っていないはずです。

しっかりとファンが求める形で証券化を進めるという見極めが難しいところですね。

記者:
確かにファンが応援する気持ちはお金だけではないですものね。

SKIYAKI 小久保 代表:
そうなのです。先ほどの証券化するというお話については、アーティストが個で動く時代においては、その管理がアーティストの負担になる可能性があります。

もしトークンを管理できるエージェンシーが出てくれば、サービスの証券化も可能になるかもしれません。

レヴィアス 小町ディレクター:
確かにアーティストや選手が個人単位で証券化に取り組むのは難しいです。だからこそライセンスの管理者やプラットフォームが重要な意味を持つと考えています。

SKIYAKI 小久保 代表:
私たちは最終的に、誰もが好きなことをして生活ができるプラットフォームを作りあげたいと考えています。

先ほども話題に上りましたが、CDを売ってライブをするという経済圏が変化しており、個人のセルフプロデュースで人気が獲得できる時代になりつつあります。しかし個人でアーティストとして活動しても、それだけで生活ができるほどにインフラは整っていません。

私たちはこれからも時代に合ったサービスを作り続け、一人でも多くの人が好きなことをして生きていける世界を目指したいと考えています。

記者まとめ

コロナウイルスの影響を受けてライブができず、音楽のあり方が大きく変化している。

今まで包括的なプラットフォームを提供してきたSKIYAKIは、今後もライブ配信などを踏まえてウィズコロナの音楽のあり方を模索中だ。一方でレヴィアスは金融領域でDXを推進しており、今回の対談では株や債権だけでなくアーティストのプロジェクトを証券化する可能性などについても議論が行われた。しかし音楽のファンはお金だけでは動いていないという事実もあり、どのように金融領域と音楽業界が融合していくのかは興味深い動きになりそうだ。今後の両社の動向に注目したい。