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テクノロジーを使って英語教育を全ての人に:スピーキングテストにAIを活用 / 〜英会話とテクノロジーの未来を語る〜レヴィアス株式会社 代表取締役 田中慶子
株式会社レアジョブ 代表取締役社長 中村 岳

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがあるだろうか。全てのモノがインターネットに繋がり、お金はデジタルに変化し、人工知能が社会インフラを支える、そんなデジタル化された時代が到来することを予期する概念だ。
全てのものがデジタル化されるという潮流は、年々強くなっている。VentureTimesは、様々なベンチャー企業の代表者を取材している中で、このDXの波を強く感じてきた。どの企業もDXを念頭におき、近い未来に対してどのような事業の在り方があるのか、模索を続けている。

そこで弊社は、DXについて、各業界をリードする企業がどのような取り組みを行っているのかを取材し、未来へ向けての考察として読者にお届けする。

本企画では、DXの最前線に立つゲストとして、AI、FinTech、ブロックチェーンなどの先進技術の開発を行うレヴィアス株式会社代表取締役の田中慶子氏を招き、様々な領域でトップを走る企業の代表者様と今後のデジタル化社会について語り合う。

今回は、「Chances for everyone, everywhere.」というグループビジョンのもとで、英語関連事業を展開する株式会社レアジョブ代表取締役社長の中村 岳 氏との対談を実現。

オンライン英会話というサービスを10年以上前に始めた当時の、技術を浸透させる難しさや、一方で昨年発表された「PROGOS」というAIを活用した英語スピーキング力測定システム、そしてすべての国の人が平等に英語を学べる未来などについての議論が行われた。

株式会社レアジョブ:日本人1000万人を英語が話せるようにする

株式会社レアジョブ 代表取締役社長 中村 岳 氏

記者:

本日はお時間を頂戴しましてありがとうございます。このインタビューは、デジタル化に社会が向かう中で、各企業様がどのような取り組みをされているのかを対談形式で取材しております。
それではまず、株式会社レアジョブ様から、貴社の事業内容をお聞かせいただけますでしょうか。

レアジョブ 中村社長:

はじめまして。株式会社レアジョブ代表の中村 岳と申します。弊社は2007年に創業し、「Chances for everyone, everywhere.」というグループビジョンのもとで、グローバルに人々が活躍する基盤を作りたいと考え、活動しています。その中で国際的な共通言語である英語に注目し、サービスミッションとして「日本人1,000万人を英語が話せるようにする。」を掲げてオンライン英会話サービスを中心に英語関連事業を提供しています。

サービスの開始は今から13年ほど前でした。当時は日本人の中で英語を話したいけど、気軽に話せる場所がないという課題がありました。そのような課題を解決するためにSkypeを使って英語堪能なフィリピン人講師とマンツーマンのオンライン英会話レッスンを格安で提供しました。

私達のサービスは徐々に認知されて、今では90万人以上の方にご利用いただいています。競合他社も出てきたので、オンラインで気楽に英語を話す機会の提供は十分にできたかと考えています。

直近では、AIを活用した英語スピーキング力テスト「PROGOS」を開発しました。スピーキング力の指標は広く浸透しているものがあまりないのが現状で、本サービスでは、外国語のコミュニケーション能力を表す指標・国際標準規格のCEFR(セファール)をベースに測定するAIシステムを開発しています。

従来は手動で採点していたのですが、その採点データをもとに機械学習をしてAIが自動採点を行います。「PROGOS」を活用することで、オンライン受験をして数分後には正確な結果が返却され、スコアの結果だけでなく、どのように何を学習していけばいいか、今後の学習提案をします。「PROGOS」により世の中のスピーキング力測定のスタンダードとなるシステムを作り出し、このシステムを自社のサービスだけでなく、他社へのシステム提供も視野に入れ、展開を広げていきます。

我々はDXの文脈でテストの実施と採点のオンライン化に注目をしています。今まで試験会場で行うべきテストをPCや、スマホで受験できて、測定から返却までも自動で行われる。信頼性の高い基準で語学試験の利便性を高めることで、グローバル人材スキルに新たなモノサシの提案をしていきたいと考えています。

レヴィアス株式会社:既存のサービスと最新テクノロジーを掛け合わせる

レヴィアス株式会社 代表取締役 田中慶子 氏

記者:

ありがとうございます。設立当初からデジタル化を念頭においてこられたのが伺えます。
では続いてレヴァイス様からも、貴社の事業内容をお聞かせいただけますでしょうか。

レヴィアス 田中代表:

レヴィアス株式会社代表の田中と申します。弊社は2018年に設立されたスタートアップ企業です。主にブロックチェーンやAIなどを活用して社会の様々なサービスを最適化し、デジタル化を推進していくための会社として立ち上げました。ペーパーレスや、先程のお話にもありました英語試験のオンライン化、テレワークなどが進む時代において、データの改ざんが難しいブロックチェーン技術が普及すると見越して、ブロックチェーンと金融をかけ合わせたフィンテックの領域で自社開発と研究を行っています。

オンライン英会話を始めた当初の2つのハードル

記者:

ありがとうございます。レアジョブ様はオンライン英会話業界の中で長いご経歴をお持ちだと思います。13年前にオンライン英会話を始められた当時、ユーザーに受け入れられるのに時間がかかりましたか。

レアジョブ 中村社長:

そうですね。始めたときには2つの壁を超える必要がありました。1つ目は当時、英語を学習したいと思うと、一般的にはフェイス・トゥ・フェイスで英会話教室に通うことが主流だったことです。当時は英語に限らずオンラインで人から何かを学ぶ、レッスンを受けるという体験を多くの人はしたことがありませんでしたので、その中でオンライン英会話を認知していただき、試していただくというのはひとつのハードルでした。

2つ目の壁は先生がフィリピン人だということです。当時の英会話教室は欧米のネイティブの方が先生で、フィリピン人は英語をうまく話せないと認識していた人が多かったです。ネイティブではない人からでも十分に英会話を習うことができると認識してもらわなくてはいけないので、まず無料で受けられる2回の体験レッスンを準備しました。実際受けてもらうことによってフィリピン人は英語が上手で、自分たちもフィリピン人と同程度の英語が話せるようになりたいと認識が変化しました。

記者:

やはり最初の数年間は普及させるのが難しかったでしょうか。

レアジョブ 中村社長:

そうですね。開始1、2年目は月に100人くらい有料会員が増えていくという感覚でした。当時の英会話スクールは、週一回のグループレッスンで月2〜3万円でしたが、我々のサービスでは月5000円で毎日25分のレッスンを受けられるので評判になり、口コミで広まりました。

様々な領域でデジタル化が進むという確信:自分がほしいサービスを作る

記者:

なるほど。中村さんは13年前の時点で、オンライン英会話が一般に浸透するという確信はお持ちでしたか?

レアジョブ 中村社長:

そうですね、オンラインに向かう流れは感じていました。例えば証券を買うために昔は電話をかけるか、店頭に行っていたものが、今はネットで買えるようになりました。また、書籍も電子化するなど、様々なものがオンラインに置き換わっていく中で、英会話もフェイス・トゥ・フェイスでなくても会話はできるし、オンラインになることのメリットも十分にあるため、将来的にはオンライン化が進むと考えました。

当時は認識の変化に時間がかかっても、時間が経てばより多くの人が使ってくれるのではないかなと思っていまして、実際に自分がほしいと思うサービスを作っていきました。このようなサービスがあればオフラインの英会話教室はオンラインに置き換わる可能性もあるかと考えていたのですが、現在はオンラインとオフラインそれぞれの価値が明確になっているように思います。

金融市場をデジタル化する難しさ

記者:

全てがオンラインになるわけではない、オフラインも残る、というのは興味深いですよね。今後のデジタル化を象徴することだと思います。
レヴィアス様はレアジョブ様が10年前にやられたような業界にDXをもたらすという取り組みを、現在金融業界に対して行われていますが、金融業界のデジタル化はハードルが多いですか?

レヴィアス 田中代表:

デジタル証券の研究を4年ほど行っていますが簡単には進みません。ただ一昨年よりも去年、去年よりも今年という形で段々と理解者が増えていると感じます。事業が世の中に浸透してこそのイノベーションだと思っておりますので、そこに向けて日々努力しています。

発展途上国の全ての人に教育サービスを

記者:

ある意味で金融業界は大きな岩であり、転がるまで時間がかかると思います。レアジョブ様は国境をまたいでサービス展開されているので、レヴィアス様が金融のDXを進め、例えば国際送金を簡単にできるインフラを作り上げれば、レアジョブ様のようなオンラインサービスも国境を超えて展開しやすくなるのではと感じます。

また、クレジットカードや銀行口座を持っていないけれど、オンラインで英語を学びたいという人は多いと思われます。金融の障壁がなくなると、今はまだリーチできていないような国々でもオンライン英会話が広がる可能性があるのではないでしょうか。

レアジョブ 中村社長:

そうですね、学習者の方にとってもチャンスは広がると思います。弊社のサービスの場合は、日本からフィリピンにいる講師への送金に苦労しています。まずフィリピンの講師の方に銀行口座を作って頂く必要がありますし、日本からダイレクトに振り込む場合に手間がかかり、なおかつ手数料が高いです。もしダイレクトに振り込めて手数料が安いインフラができるとサービスの仕組みも変わってくると思います。

AIで英会話の採点をするシステム:「PROGOS」

記者:

先程ご紹介された、英語スピーキング力をAIで判定する「PROGOS」のことをお聞きしてもよろしいですか?

レアジョブ 中村社長:

はい。弊社の最終目標としては「PROGOS」で用いているCEFR(セファール)の基準が当たり前のように広がって、例えば海外赴任するにはCEFR(セファール)の〇〇以上のスコアが必要、というような使われ方が広がればと思っています。現状はTOEICのListening&Readingのスコアが広くビジネス英語の基準となっていますが、それだとスピーキング力のスキルを正しく判断できないことが課題です。そこで、CEFRの指標がビジネス英語のスピーキング力採点のスタンダードになり、活用されていく社会を目指しています。例えばLinkedInや履歴書に「PROGOS」で採点されたスコアを入れられるようになればいいですね。

レヴィアス 田中代表:

素晴らしいお取り組みですね。PROGOSで使われるAIは、自社で開発されているのですか?

レアジョブ 中村社長:

そうです。音声解析はグーグルやアマゾンのAPIを使っていますが、機械学習の部分は自社で開発しています。

AIを活用した英会話サービスの将来:課題は人とAIの住み分け

記者:

両社様にお聞きしたいのですが、発展途上国などで、学校にいけないような子どもたちは、英語の勉強をしたいと思っているでしょう。そのような国では、例え学校には行けなくても、スマートフォンの普及率は高いので、オンラインで英語の授業を受けることは可能だと思うのですが、そのためにはレヴィアス様の金融領域への働きかけも必要ですし、レアジョブ様が子ども達にリーチすることも必要だと思います

レヴィアス 田中代表:

そうですね。一方、人ではなく、AIが講師になる未来も考えられます。AIがデータを蓄積して、生徒に最適な教育システムを提供し、蓄積してあるデータをマーケティングに活用してAIのレベルを上げていく時代が、近い将来訪れると思います。

レアジョブ 中村社長:

そうですね。AIで完結するサービスを考えてはいるのですが、教育の大きなハードルは技術的なものではなく、モチベーションを維持することです。人に見られていないと、自主的に学習できる人は多くはありません。受講者のモチベーションがAIでも触発できるなら、十分AIだけで完結するサービスが考えられますが、現状はまだ難しいと思っています。今のところは、モチベーションを喚起する、コーチングのような役割として人がまだまだ必要です。

一方で単純な練習相手はAIに置き換わると思っています。人間が必要な部分とAIでもいい部分をうまく分けつつ、AIとうまくかけあわせながら時代にあったものを生み出したいと考えています。

記者:

レアジョブ様は、AIによる英語のレッスンなどの活用法も見据えていらっしゃいますか。

レアジョブ 中村社長:

常に可能性は考えていますが、一気には進まないと思っています。その理由は先ほども申し上げた受講者のモチベーションの部分です。AIで可能なサービスを全部作っても時代に対して早すぎてしまうと、一般では活用されません。今の学生や大人の方も含めて何が必要なのかを踏まえつつ、適切なタイミングで適切なサービスを出していくのが望ましいと思っています。

DXによる未来に向けて

記者:

ありがとうございます。では、両社様において、これからの未来への抱負を教えていただけますでしょうか。

レヴィアス 田中代表:

そうですね。先程のお話にありましたように、良いものはたくさん世に出ていますが、課題はそれが人々に浸透して、サービスが使われて、認知されていくところだと思います。レアジョブ様のような会員ビジネスでは情報の漏洩などの危険がおありかとおもうので、ブロックチェーンなどを活用して安全にデータを保管するサービスを開発して、お客様に提供できればと思っています。

記者:

ありがとうございます。では続いてレアジョブ様はいかがでしょうか。

レアジョブ 中村社長:

弊社は引き続き現在の英語関連事業を伸ばし、先の時代を見据えて、どのようなサービスが必要になるのかを考えていきたいです。ゴールに至るプロセスが今後は変化していくと思うので、プロセスを洗練させつつ、世界にも展開したいと思います。そして英語ができるようになった先にどのようなスキルが必要なのか、個人データも活用しながらキャリア形成などのお手伝いをさせていただく事業を展開したいと考えています。

記者まとめ

いかがだっただろうか。AIを活用した英会話テスト採点システム「PROGOS」や、AIを活用した今後の英会話のあり方について興味深い議論が行われた。また、国際送金における課題や、それを解決することで変化するサービス内容など、未来に多くの可能性を感じる内容だった。DXという分野は、異なる方向性のアプローチでも、互いを補完し合うものだ。両社の今後の動向に注目したい。