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アフターコロナで求められるのは効率化ではなく価値観の転換である / 〜オートメーションの未来を語る〜レヴィアス株式会社 取締役 樋渡智秀 
協立電機株式会社 代表取締役社長 西信之 

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがあるだろうか。全てのモノがインターネットに繋がり、お金はデジタルに変化し、人工知能が社会インフラを支える、そんなデジタル化された時代が到来することを予期する概念だ。

全てのものがデジタル化されるという潮流は、年々強くなっている。VentureTimesは、様々なベンチャー企業の代表者を取材している中で、このDXの波を強く感じてきた。どの企業もDXを念頭におき、近い未来に対してどのような事業の在り方があるのか、模索を続けている。
そこで弊社は、DXについて、各業界をリードする企業がどのような取り組みを行っているのかを取材し、未来へ向けての考察として読者にお届けする。

本企画では、DXの最前線に立つゲストとして、AI、FinTech、ブロックチェーンなど先進技術の開発を行うレヴィアス株式会社の取締役である樋渡智秀 氏が、様々な領域でトップを走る企業の代表者様と今後のデジタル化社会について語り合う。

今回は”技術と信頼の協立グループ”という理念のもとでFA技術とIT技術の融合分野であるインテリジェントFAシステム市場を対象に開発型ビジネスを通して豊かな未来社会に貢献する協立電機株式会社の代表取締役社長 西信之 氏との対談を実現。

新型コロナウイルスの影響で海外の移動を伴う業務をどのようにデジタル化するのか、そして企業は技術を取り入れて効率化するだけでなく、価値観を変えてこそDXであるという本質的な議論が行われた。

※本インタビューはオンラインにて行いました。

協立電機株式会社:商社・メーカー・メンテナンス機能を全てワンストップで対応

協立電機株式会社 代表取締役社長 西信之 氏

協立電機 西社長:

本日はよろしくお願いします。協立電機株式会社 代表取締役社長 西 信之と申します。

弊社のお客様は主に製造業メーカー様であり、製造ラインの自動化、出荷試験や製品性能試験のお手伝いをしています。

2020年9月時点でグループ会社は24社あります。日本各地および東南アジアからインド、アメリカまで営業所を展開しています。24社は主に3つのグループに分けることができます。

  • ものを売り買いする商社系の会社
  • ものを製造するメーカー系の会社
  • 現場で工事とアフターメンテナンスに携わる会社

我々のビジネスモデルは「ワンストップショッピング」と呼ばれています。先ほどの3つのグループからもわかるように、商社の機能、ソフトウェアを開発・販売するソフトハウスの機能、物を作るシステムハウスの機能、工事を行う機能、アフターメンテナンスを行う機能の全てを合わせて、お客様のニーズにワンストップで対応可能です。

レヴィアス株式会社:金融資産の流動化プラットフォームを独自開発

記者:

ありがとうございます。続いて、レヴィアス様から事業のご紹介をいただけますでしょうか。

レヴィアス 樋渡氏:

レヴィアス株式会社経営管理本部取締役の樋渡智秀と申します。

弊社は2018年に設立したベンチャー企業です。ブロックチェーンやAIなどの最先端技術を用いてDXを推進し、最先端テクノロジーで人々の生活を豊かにするという理念のもとに設立された企業です。

現在はFintech領域にフォーカスして、金融資産の二次流通のためにブロックチェーンとAIを融合させた新たなプラットフォームを開発しています。
対象とする金融資産は証券会社が扱っている株や債権ではなく、未上場株、ファンドの持ち分、新株予約権、などです。流動性の低い資産をオンラインで簡潔に売買できる仕組みづくりに取り組んでいます。金融商品取引法をはじめとした各種法律に準拠したいわゆる「プライマリ」から「セカンダリ」のワンストップのシステム実装を目指しています。

また、当社では、世界初の自律分散型ネットワークシステム「LEVIAS DEEP CLOUD」 クローズドベータを開始しています。

こちらはLEVIAS Chain (LEVIASのオリジナルブロックチェーン)と紐付く各種分散したソフトウェア群(電子契約、電子マネー決済、フェイス ID、eKYC、Dapps、Defi contract、AI 行動認識、 AI 自動会話プログラム等)が自律的にデータ連携する為に必要な基幹システムです。

協立電機のDXへの取り組み

記者:

今回はDXがテーマとなっています。協立電機様はどのようなDXの取り組みをされているのでしょうか。

協立電機 西社長:

DXの切り口から我々の取り組みを見ますと、大きく三つの切り口があります。

1つ目が我々自身の業務のデジタル化です。

メンテナンスの業務を例に取ると、お客様のところで修理をして、会社に帰ってきてそのデータを移し、報告書を書き、郵送する流れです。この作業はあまり効率的とは言えません。現場にタブレットを持っていき、その場でデータを入力し、報告書が完成すれば効率的になります。

しかし、これは一見デジタル化ですが、今の作業の延長でしかありません。これは効果はあっても、新しい考え方や価値観が生まれたわけではありません。我々は新しい価値観を創出するようなDXの取り組みをしていきたいと考えています。

2つ目は社会課題を解決するためのロボットの活用です。

現代日本では少子高齢化社会が問題になっています。我々のお客様の中でも特に製造業では人手が足りなくなっていくと予測されており、今後はロボットの導入や自動化が進むことは明白です。

自動車産業は真っ先にロボットを導入して大きな成果を出しました。ところが他の業界にはロボットなどの導入がなかなか進まないところもあり、人員の問題は依然として深刻です。そこでロボットを導入することをきっかけにして様々な新しい取り組みができないかと考えています。

3つ目は我々の製品自体のDXです。

我々の製品を海外で使用していただくことが多いのですが、コロナウイルスの影響が大きく出ています。我々の製品を船便で東南アジアにお送りすることはできますが、やはり日本の技術者が据え付け、調整しなくてはいけません。しかし技術者は現在日本からタイにいけないのが現状です。

そこで現地の方に調整を行っていただき、それをカメラで日本からサポート、指示するやり方を考えています。

この3つが我々の業界で今まさに起きている出来事です。

レヴィアス社のDXへの取り組み

記者:

ありがとうございます。引き続きレヴィアス様のDXへの取り組みをお聞かせください。

レヴィアス 樋渡氏:

DXの定義を調べてみたところ、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された「IT、デジタルの浸透によって人々の生活を豊かにする」という概念でした。弊社ではDXへの取り組みを主に3つ行っています。

1つ目は電子契約です。書類のペーパーレス化を図り、これまでの印鑑による物理的な書類のやり取りを不要にしております。

2つ目はZoomやGoogle Meetなどテレカンツールを活用したオンライン取締役会、及びオンライン株主総会を行っております。総会や取締役会というものについては、えてして多忙なステークホルダー達の日程調整が難しいものです。それに加えて、今ではコロナウイルスの影響でフェィストゥーフェィスで集まることがリスクになっているためです。

3つ目が先ほど紹介したプラットフォームです。流動性の低い資産に流動性をもたらす仕組みを構築しています。また、当社のフィンテックにおける世界初の自律分散型ネットワーク基幹システム「LEVIAS DEEP CLOUD」を活用することで、各種契約・資産の譲渡に関する申込み、海外金融システムとの連携、各種電子契約の締結に対する電子マネーでの決済等について、スマートフォンで実行することが可能になります。

記者:

金融業界は規制が厳しいと伺っています。コロナウイルスの影響で金融業界のデジタル化は進みましたか。

レヴィアス 樋渡氏:

コロナウイルスがDXを後押ししている側面はあります。意識の変革は起きていると感じていますが、他の業界と比べてデジタル化の導入は少し遅れていると感じます。

記者:

なるほど。金融業界は若手の企業も多いですし、デジタル化することで企業価値が上がり、資金調達しやすくなると思いますが、いかがでしょうか。

レヴィアス 樋渡氏:

ここ数年でキャッシュレス決済が爆発的に普及したのはベンチャーマインドに溢れる経営者たちが取り組んだ結果だと思います。その意味では金融業界全体でDXが進んでいます。一方でブロックチェーンでは過去ICOの資金調達に際して詐欺行為が頻発するなどの問題が起きました。ブロックチェーン自体は素晴らしい技術だとは思いますが、新しい技術ですので、一長一短な側面があると感じています。しかしながら、各種法律に準拠した形での有価証券のブロックチェーンによるセキュリティトークン化は金融業界を激変させる大きなDXの要素であると考えています。

ブロックチェーンを活用して入札や企業データのセキュリティを担保する

協立電機 西社長:

DXが進まないことは全ての業界で共通の課題です。例えば入札は電子化しているのですが、入札の後は提出先ごとの書式の違いや、40ページ以上に及ぶ紙の資料にハンコを押さなくてはいけません。

記者:

それは大変です。提出書類のフォーマットを共有し、デジタル化するのは喫緊の課題ですね。
樋渡様の取り組まれているブロックチェーン技術は入札に応用できそうです。

レヴィアス 樋渡氏:

はい、ブロックチェーンには改ざんが難しいという特徴があります。入札や選挙などと相性が良くて、実際に活用しようとする試みがなされています。また、A Iなどを組み合わせて入札者や投票者の挙動を機械学習させ、不正を防止させるような仕組みもブロックチェーンとは相性が良いのではないかと考えています。談合や不正選挙の抑止力としてこれらのテクノロジーが活用される未来が、まさに我々の目指す「DX」なのではないでしょうか?

協立電機 西社長:

ブロックチェーンは安全性が高いと伺いました。
私どものお客様はデータの取り扱いに非常に繊細です。大事なデータが流出してしまうことは会社の存続に関わります。

そこでVirtual Private Network(VPN)や暗号技術を活用しようとするのですが費用が高くなるケースが多いです。そのためデータをどのように安心安全に送るかが課題となっています。

例えば、ブロックチェーンにデータを入れれば、他者に見られることを心配しなくても良いのでしょうか。

レヴィアス 樋渡氏:

ブロックチェーンには秘密鍵というものがあり、それを持っている人しか中のデータを見ることができない仕組みです。
ある意味ではユーザーに依存していまして、誰かが秘密鍵を紛失すると二度と見ることができなくなります。逆に持っていなければ見ることは不可能なので、適切な管理ができていれば非常に安全な技術と言えるでしょう。

記者:

セキュリティは重要な問題です。国防に関わる企業でさえハッキングされていたり、Facebookのような巨大企業の情報漏洩もあります。DXを促進するためにはセキュリティを万全にしなくてはなりませんね。

レヴィアス 樋渡氏:

当社ではそのような秘密鍵のみならずユーザーのKYC情報を適切かつ利便性を向上させた形でユーザーが利用できるアプリケーション(eKYCアプリ)も開発しております。

最後に一言

記者:

最後に一言、今後のビジョンや抱負をいただけますか。

協立電機 西社長:

まずコロナウイルスの影響がおさまったとしても、全てが元どおりにはらないと思います。

例えばウェブ会議は以前から話題には上がっていましたが、最初の一歩が踏み出せませんでした。しかしコロナウイルスの影響でやらざるを得ない状況になり、実際にやってみると便利さに気がつきます。
メリット・デメリットがあることを踏まえて、コロナウイルスで普及した技術をどのように取り入れていくか。業務の改善とは単にデジタルに置き換えるのではなく、価値観を変えることです。

そして今回のDXで重要なのが5Gの登場です。通信速度が速くなると同時に、VRやARも普及していきます。仮にそうなれば、我々の働き方は急変します。マニュアルを持って現場に行かなくてもよくなり、突き詰めるとベテランでなくても仕事ができるようになります。社会構造、産業構造自体が変化するのです。
しかし、テクノロジーによって完全に現場に行かなくていいというわけではありません。テクノロジーと現場をうまく組み合わせる必要があります。

弊社は新しい時代に向けて適切なご提案ができるように努力していきたいと思っています。

記者:

ありがとうございます。続いてレヴィアス様お願いいたします。

レヴィアス 樋渡氏:

現在はフィンテックの領域に特化してプラットフォーム開発をしています。このプラットフォームの技術をふるさと納税やアーティストのコンサートなどに活用したいと考えています。
金融という一番大変な領域を流動化させることができれば他のジャンルにも応用できるはずです。5年以内には金融領域でプラットフォームを実現させ、横展開していきたいと考えています。

記者まとめ

いかがだっただろうか。協立電機株式会社は創業60年以上にわたってIoTやオートメーションに携わってきた企業である。日本以外にも9カ国に拠点がありグローバルに事業を展開している。コロナ禍で国内外の移動が制限される中で協立電機株式会社は新しい時代に新しい価値観を提供していきたいという。
一方でレヴィアス社はブロックチェーンやAIの技術を活用して金融資産のDXを促進。金融に加えて様々な領域でも安全・手軽に資産を移転できるプラットフォームを開発している。今後の両社の動向に注目したい。