記者:
本日はよろしくお願いします。まず株式会社ふらここ様の事業内容をご紹介いただけますか?
ふらここ 原代表:
株式会社ふらここの原 英洋です。弊社は雛人形・五月人形の製造、小売りを行っております。
私達の業界は伝統的な雛人形・五月人形の製造販売をしている会社が多い中で、弊社は初めて可愛い赤ちゃんの顔をした手のひらサイズのコンパクトな人形を作りました。若いお母様に好評頂いています。
会社は2008年に私が創業して、ちょうど14年目に入ったところです。正社員・パート社員含めてちょうど30名、年商は6億5000万ほどになります。
記者:
続いてレヴィアス株式会社様のご紹介をお願いします。
レヴィアス 田中代表:
レヴィアス株式会社代表の田中慶子です。本日はよろしくお願いします。
弊社は2018年に設立したスタートアップです。AI、ブロックチェーンなどのテクノロジーを活用して、今あるサービスを便利にしたいという理念で会社を立ち上げました。
現在はフィンテック領域に注力しています。スーパーなどで商品を購入する場合は、お札・小銭を出していた時代から、Suicaなどのキャッシュレスに移行しています。そのキャッシュレス決済の基盤などの開発が弊社の取り組みです。
記者:
今回はDXが主題です。ふらここ様は雛人形・五月人形を2008年からオンラインで販売されていると聞いて、今回の対談をお願いしました。
ふらここ 原代表:
はい。私たちは楽天、Yahoo!などではなく、自社サイトで雛人形・五月人形の販売をしています。
またサイトのほか、Instagram・Twitter・Facebook等で20代後半から30代前半の女性を対象に情報を発信しています。
雛人形・五月人形も10万円以上の高額商品でしたので、ネットで売れるか創業当初は不安でした。今では順調に成績を伸ばして、年間で6000人を超えるお客様にご購入いただいています。
記者:
雛人形・五月人形を若い方向けにオンラインで販売するきっかけは何だったのでしょうか。
ふらここ 原代表:
私は前職でも同様の雛人形・五月人形の製造・販売を行っている会社にいました。
店頭で雛人形・五月人形を販売している中で、段々と客層が変化していることに気がついたのです。具体的にはおじいさま・おばあさまが選ぶのではなくて、若いお母様が選ぶようになってきたと肌で実感しました。
そこで若いお母様向けへの商品開発へと、前職のときから方向転換をしたのです。
同時に25年ほど前にはインターネットに繋ぐのも全部電話回線という時代に、面白そうだなと思って実験的にホームページを立ち上げていました。
転機が訪れたのは街頭でADSLが無料配布されて、一気にインターネット時代が幕開けした時です。すでにホームページを立ち上げていたので、どんどん売上が伸びていきました。
創業当初の2008年は、まだまだインターネットで高単価なものがそれほど多くは売れる時代ではなかったので、1つの冒険だったかもしれません。しかし、これからインターネットの時代になると思い、創業した時にはもうオンライン販売に的を絞ることにしました。
レヴィアス 田中代表:
原様が素晴らしいのは大手様のプラットフォームのサービスではなく、自社で販売されていることです。
実は他社様のサービスを利用すると、私たちのお客様情報をプラットフォームにも共有していることになります。
決済も同様です。例えば日本橋から銀座までタクシーに乗り、QR決済をします。その情報はQR決済に使用したアプリの会社に共有されます。
だからこそ独自のデータを持っていることは重要です。データを元にすることで、しっかりとお客様に沿ったサービスを提供することができます。
ふらここ 原代表:
ありがとうございます。他社のプラットフォームに出店をしなかった1番大きな理由は、ブランドを作りたいと思ったからです。
自社販売ですと集客も工夫する必要があり大変でしたが、田中代表がおっしゃられたように、データを蓄積できました。そのデータをこれからどのようにマーケティングに活かしたらいいかと考え始めたところです。
記者:
ありがとうございます。原代表にとってDXとは何でしょうか。今後どういう風に社会や、貴社の事業は変化すると思いますか。
ふらここ 原代表:
DXに関しては手探りな状況ですが、2つのポイントがあると思います。
1つはデジタルデータを使って、どのようにビデ ジネスを作り上げ、情報を発信していくかということ。
2つめは、業務効率化を図ることです。
新型コロナウィルスの影響で去年の4月に緊急事態宣言が出されましたが、それ以前から弊社ではテレワークをすすめる動きがありました。
ネットで情報を一元管理していましたし、情報発信も全てネットを通じていましたので、テレワークへの移行もスムーズでした。
しかしテレワークが進んだとはいえ、我々は雛人形・五月人形を手作りしています。必ず手で作る現場は必要ですし、物の移動もあります。
デジタルとリアルをどのように組み合わせて仕事を効率化し、そして情報発信をしていくかが、今後とても重要なテーマになると思います。
記者:
田中代表のお取り組みは普通のウェブ・マーケティングとは違って金融業界の刷新にも取り組んでいらっしゃいます。原代表が5年後、10年後の戦略を考える中で、田中代表の視点は興味深いのではないでしょうか。
さて今回の対談はオンライン通販の観点からDXについて考えてきました。田中代表はDXについてどのように考えていますか?
レヴィアス 田中代表:
少し前まで取材と言ったらオフィスで対面して行うのが当たり前でした。今はZoomでミーティングや取材が当たり前で、すごい変化だと思います。
先ほどの社内業務の効率化というお話に関係するのですが、一般的にDXと言うとデジタルツールを導入することだと思われがちです。しかし、導入してからどのように運用するのかこそが大事です。
実際に運用して、トライアンドエラーを繰り返すことで会社の業務効率が上がります。効率化により生まれた時間を使って、お客様により良いサービスを受けていただく。そこまでいって初めてDXという言葉が成立すると思います。
また物よりも体験が重要視される時代に変化してきているとも感じます。
ふらここ様は手作りの人形を作っていらっしゃいます。年に1回のひな祭りなどの記念日を思い出すために、この人形が必要なわけです。
この人形をいくつ販売するかという話ではなく、人形を通した体験や感動こそが本当のマーケティングにつながるのではないでしょうか。
赤ちゃんみたいなお人形ということでしたので、例えばオーダーメイドでお子さんに似たお人形を作るとか、親子で一緒に作れるキットを販売することで忘れられない思い出を提供できるのではないかと思いました。
記者:
最後に原代表から今後の展望をお聞かせ頂けますか?
ふらここ 原代表:
田中代表のおっしゃる通りです。家族が人形を囲んで団らんを楽しむ、その幸福感を、雛人形・五月人形を媒体にしてお届けしていると思っています。
レヴィアス 田中代表:
間違いありません。
ふらここ 原代表:
どうすればお客様に幸福な体験をしていただけるのか。いろいろなデータを元に分析して、それを商品作り・情報発信に反映させたいです。
また私たちの扱っている雛人形や五月人形はお子さんが生まれてすぐに買うものです。お子さんが育つ過程でのふれあいの場を、私達の方から提供していくことは、とても大切なことだなと思いました。
加えてインターネット社会になって、情報が身近になりました。それゆえ、しっかりと発信しないと、お客様からマイナスなイメージを持たれてしまいます。
お客様はどのような情報を望んでいるのか、それをきちんと理解して、寄り添って伝えていくことが必要だと思っています。
製品開発など、お客様とのつながりを大切にしたビジネスの展開をしていくつもりです。
レヴィアス 田中代表:
素晴らしいです。本日はありがとうございました。
雛人形・五月人形と聞くと一見DXとは関わりがないテーマだと思っていた。しかし株式会社ふらここはオンラインショッピングが普及する前から、自社サイトでの販売を開始。今では年間で6000人以上の方が購入しているという。
レヴィアス株式会社はブロックチェーンやAIなどの技術を活用した新しい決済基盤などを開発している。一般的にDXという言葉はデジタルツールを導入することだと思われがちだが、実は導入した後のトライアンドエラーこそが重要だという話は記者にとって新鮮だった。
最初は関係が薄いと思われた二社だが、DXを通してお客様により良い経験や、幸福を感じていただきたい、という思いは共通していた。アフターコロナでさらに重要な考え方になっていくだろう。
今後の両者の取り組みに注目していきたい。