「個人間売買には消費税がかからないし、売り手と買い手との間に中抜きが発生しないので、高く売れて安く買える。諸外国を見ると消費税が伸びていく国では個人間売買が伸びている。ドイツでは中古車の65%が個人間売買で流通しているとも言われている。」(江幡氏)。
すでに同社は中古車の個人間売買でトライアルを開始した。カーコンビニ倶楽部と合弁会社を設立し、「カーコン・マーケット」というサービスで個人間売買をサポートしている。売り手の車を各店舗のカーコンシェルジュが専用タブレットで査定して、修復歴がないことを確認し、法定12ヶ月点検を実施して買い手に引き渡す。高額商品に必須の安心を担保しているのだ。
たとえば135万円で売却された車が、幾重もの流通費用と販売利益によって購入時には210万円に跳ね上がっていたとする。一方、この仕組みによって、155万円で売却された車が180万円で購入できるという。20万円高く売れ、30万円安く買えるという売買が想定できるのだ。
この個人間売買も、じつはAll Aboutに通底している。カーコンシュルジュもガイドも、同社は「スキルワーカー」と定義する。新たなスキルワーカーを発掘しながら、従来のスキルワーカーには新たなスキルを見につけさせ、プラットフォームを用意して活躍の場を与え、ユーザーに価値を提供する。このサイクルを循環させることこそ、オールアバウトの核心なのかもしれない。
あらためて江幡氏は持続性を強調する。
「本質的に長くつづく事業をやることが、社員のやる気にもつながると思う。時代観としては、付け焼刃的な事業を金融の力でIPOして、それがゴールになってしまうような経営もあるのかもしれない。だが、若い経営者には社会を変革することを志向してほしい。」
こういう会社で働く社員は、機会創出力や自己変革力が身につき、起業家の資質が鍛えられるのではないか。機会をあらためて社員の皆さんにも話をうかがいたい。
経済ジャーナリスト
小野 貴史