経営幹部会議で愛社精神に触れると、岡村氏が「尊敬している」と評価するHRM担当執行役員の松嶋良治氏が「まず会社が社員を愛するべきではないのか。それなくして社員に愛社精神を求めるのは傲慢ではないのか」と指摘し、出席者たちが賛同した。その結果、①健康を守る②家族を大事にする③仲間意識を強く持つ――を趣旨に愛社員課を開設したのである。
愛社員課では、岡村氏が月に数回社内で夕食を作って振る舞う「岡村屋」の開催や、週1回全社員への野菜配布を通じて健康管理をサポート。さらに「パパママコンシュルジュ」と呼ばれる担当社員が、勤務に関わる相談窓口になって様々な制度を案内している。岡村氏によると「後になって気づく父親の愛情でなく、その時々にはっきりとわかる母親の愛情を示している」。だから愛社員課なのである。
岡村氏が大切しているのは謙虚であること。これも松嶋氏からの教えだという。設立当初こそ自分の判断は100%正しいと思っていたが、「ビジョナリーカンパニー」などを読み込んで謙虚について学ぶうち、「自分の考えが合っているのは良くて50%、あとの50%は他人の意見を謙虚に聞いて、正しい判断をしなければならないと思うようになった」。
謙虚であれば正のスパイラルが形成されやすい。アドウェイズの足跡は、その原理を証明している。
前編はこちら
決め手は「早さ」と「違い」! リスクを覚悟する勇気も定着 | 『熱中の肖像』vol.31 株式会社アドウェイズ 岡村 陽久社長 前編
経済ジャーナリスト
小野 貴史