「私はイマジニアにいたときにIPOによる企業成長を目の当たりにしていたので、起業したときからIPOを目指し、ベンチャーキャピタルなどからも資金を集めていました。ところが、コミュニティサイトのメーンの収入源は広告なので、収益力が上がらず、IPOの基準にもなかなか達しません。そこで、コミュニティサイト事業を売却して仕切り直し、事業全体のポートフォリオを組み替えることにしました」
コミュニティサイト事業に代わって、強化したのがオンライン無料ゲームだった。
「オンライン無料ゲームは、誰でも気軽に楽しめるので、参加するハードルが低いわけです。爆発的に普及するだろうと見ていました」
ただし、オンラインゲームの開発では産みの苦しみをさんざん味わったと、長嶋会長は振り返る。既存のゲーム開発のノウハウが通用しない局面や、PC向けとモバイル向けとの違いなどが現れる局面も多かったからだ。
「例えば、スマホゲームとPCゲームでは、プレースタイルが違います。PCゲームは自宅でゆっくり楽しみますが、スマホゲームは通勤・通学の電車内などでプレーするので、短い時間でも楽しめるような仕組みにしなければなりません。また、スマホゲームのユーザーは、PCゲームのユーザーに比べて入れ替わりが激しいのが特徴。そのため、飽きられないよう、新しいイベントを次々に打ち出すといった工夫が欠かせません」
いうまでもなく、ゲーム事業はコンテンツの良し悪しに左右される。長嶋会長は、ゲーム開発を担う、優秀な技術者を集めるのにも力を注いだ。ゲームの開発プロジェクトでは、外部から招集したフリーの技術者に拠るところが大きい場合もある。そうした社外の技術者との太いパイプを培っているのが、アエリアの強みの一つになっている。
「フリーの技術者を集める場合、金銭面の条件に左右されると思われがちですが、実は、ゲーム開発で最も重要なのはビジョンなんですね。夢を感じられるプロジェクトなら、優秀な技術者がこぞって参加してくれますよ」
オンラインゲーム事業は、立ち上がりの時期には「鳴かず飛ばず」だったという。しかし、ブロードバンドの普及、さらにスマートフォンの普及とともにオンラインゲームも急速に広まり、その追い風を受けて、アエリアも急成長したのである。