1997年に設立された同社は先進テクノロジーのアーリーアドプター獲得戦略に成功し、2003年から2005年の3年間、黒字を計上したが、音声認識専業会社としては日本初の黒字化の実現だった。2005年に東証マザーズに株式上場し、一時は時価総額が1,500億円に到達し、音声認識の“第1の波”を作り上げたのだった。
その淵源は1985年に設立された人工知能開発ベンチャーのインテリジェントテクノロジーに、鈴木氏が入社したことにある。設立翌年に入社した鈴木氏は、その年にカーネギーメロン大学のスピンオフ会社であるカーネギーグループ社の知識工学エンジニア養成プログラムを修了した。
帰国後は、日本でも希少な知識工学者として人工知能の実用化と普及活動に従事していたが、「優秀な知識工学者がいないと進化しないという自己進化不能な人工知能を見限って(笑)、カーネギーメロン大学に集結し、米国防総省「DARPA」主催の音声認識競技会で優勝した天才たちと組み、テーマを音声認識に切り換えて独立した」。のちに人工知能フレーバーの音声認識・アミボイスを世に出したのは、当然の成り行きと言えるだろう。
アドバンスト・メディアは技術開発に6年、ビジネス開発に10年を費やし、現在、ビジネス導入から普及への移行期に来ているが、これだけの期間を「成長のための挑戦」に使えたのは資金調達に成功したからだ。2000年、先述の天才たちが設立した会社が買収され、1年後にMBOで買戻し、筆頭株主として支援した結果、10年後に10倍のプレミアムでの売却に成功し、更なる資金を確保したのである。