IoTとDNNが追い風になった
鈴木氏は「私たちが日本の音声認識市場を拓いてきました。グーグルやアップルも音声認識を出していますが、彼らは音声認識で儲けようとしていない。従って、私たちの市場化に影響力を有していますが、市場形成はしていません。」と明言する。そして、第3次のAIブームのきっかけとなり、囲碁戦で天才棋士に勝利したグーグルの「アルファ碁」にも搭載されて一躍脚光を浴びたディープニューラルネットワーク(DNN)がアミボイスにも装備され、一層の精度向上がなされ、愈々、音声認識の“第2の波”による市場形成が進み始めてきた。
追い風も吹きはじめた。それはIoTの時代の始まりである。
「潜在的な需要を顕在化するアイデアが次から次へとサービスの形で生み出され届けられるIoTの時代は人とキカイとの自然なボイスコミュニケーションを必要とし、アタリマエにします」。
同社はビジネス開発からビジネス導入へと赤字続きの苦しい音声認識市場形成の道程を歩んできたが、この“第2の波”によって「黒字化が確実に見えてきました」(鈴木氏)という。
鈴木氏は先進テクノロジーを核とするベンチャー企業経営のキモは①世界水準の技術開発②その技術ならではの魅力的な製品開発③顧客(認知の)獲得――この渦巻き状に成長するポジティブ・スパイラルにあると考えている。「成長とは、出来ないことを出来るようにすることです」「企業が成長するためには経営者である私自身が成長しつづけなければならない」と語る鈴木氏は1952年生まれである。還暦を過ぎてもなお、あくなき成長をつづける秘訣は何だろうか。
「私は、成長するための重要な資質である『出来ない目標の設定力、それを出来そうなマイルストーンに砕く力、そして、俊敏で諦めない行動力』に長けた人間です」。
もうひとつ、着目したいポイントがある。成功を収める経営者には何かしら近未来の予知能力が備わっているものだが、鈴木氏は、さらに踏み込んで近未来を見据えている。「私の未来感ははずれません。何故なら、私は予言者ではなく、未来を設定し、それを実現するまで諦めずにやり抜く人間だからです」。つまり、みずから近未来の像を描いたうえで、そこに人々を連れてゆく。「経営者の役割は、みずから設定したゴールにビジネスに関わる人々を連れてゆくことです」と力を込めた。