濵村社長が住宅産業をターゲットに起業を志した理由はそれだけではない。「日本のために、日本の住宅産業のあり方を変えたい」という熱い思いがあったからだ。
ハイアスの目的の一つは住宅産業によって地方創生すること。住宅メーカーや工務店といった地場の建設業は地域産業の核であるケースが多い。地方経済の疲弊が問題視されて久しいが、地方の建設業の衰退が大きな影響を及ぼしている。ということは、地方の住宅メーカーや工務店が活性化されれば、地方経済にも活気が戻ることが期待できるのだ。
「日本の住宅産業は現在、大手住宅メーカーがリードしており、地方の中小工務店の多くがその傘下のビルダーの地位に甘んじています。しかし、大手住宅メーカーの本社は東京及び大阪なので、地方にそれほどお金が落ちない仕組みになっています。中小工務店が大きく住宅ビジネスを展開できる仕組みにすれば、それだけ地方経済も潤うことになるわけです」。
もう一つの目的は日本国民の資産形成を促進すること。いうまでもなく、国民の大半にとって、住宅は人生で最大の買い物だ。ところが、一戸建ての木造住宅の場合、15~20年で価値が約10分の1に下がってしまう。だから、国民は資産が増えず、担保能力も失ってしまうので、新たな消費や投資ができない。日本経済全体にとっても大きなマイナスになっているのだ。一方、欧米では、巨大な中古住宅マーケットが存在し、住宅の資産価値は日本のように目減りしない。住宅のオーナーは持ち家を活用し、新たな投資で資産を増やしたり、生活を豊かにしたりできるのだ。LCA時代、欧米の住宅事情を調査した濵村社長は、日本との違いを目の当たりにし、愕然としたという。
「日本の住宅が、居住機能があるにもかかわらず価値が下がってしまうのは、市場のニーズに適していないからです。つまり、コストパフォーマンスが高い“住みたい中古住宅”を安定供給できれば、そこに新しい市場が生まれ、住宅の資産価値を保つことにつながると考えたのです」。
濵村社長は、ミサワホームの創業者である三澤千代治氏とも親交が深かった。そこで、自身の事業計画について三澤氏に相談したところ、「あなたのいうとおり、日本の住宅の産業構造は変えるべきだ。私も応援しよう」といって出資し、経営顧問も紹介してくれた。それに意を強くした濵村社長は、いよいよハイアスを旗揚げすることになったのだ。