ゲーム事業に参入したのは11年である。それまでは携帯電話向けサイトやポータブルナビの開発が主力だったが、スマホの出現を機に携帯電話市場やポータブルナビ市場が縮小、経常赤字に陥った。同社は思い切って事業転換を図り、ポータブルナビ事業から撤退して、スマホ向けコンテンツ開発に着手した。
原尾氏は「3・11の影響で世の中が暗かったので、コンテンツ提供会社として世の中を明るくしたいと考えて、ゲーム事業をはじめました。この年が当社の転機になりました」と振り返るが、後発組が苛烈な市場でどう地歩を固めてきたのか。
正面から競争しても勝ち目は期待できないと判断し、対象に据えたのは、万人受けする間口の広い市場でなく、コアな層が潜んで成長力も高いオタク市場だった。この市場がいかに拡大しているかは、オタク市場最大のイベントとも言われるコミックマーケットの来場者数に現われている。16年8月開催の来場者数は3日間に55万人、同12月開催では3日間で56万人に達した。
しかも、オタク市場は客単価が高いため、ユーザー数の少ないタイトルでも収益を生み出しやすい。そこで同社は①特定のジャンルに集中することでファンを一括して囲い込み、集客効率を最大化②競合が少なく先行者メリットを出しやすいことから、安定的にポジションを確保――という方針を打ちたてた。
この方針は的中した。業績は回復して、15年2月期に年間売上高9億9100万円、経常利益9000万円、16年2月期には12億6100万円、1億5700万円を計上。17年2月期には15億300万円、経常利益は新規案件への投資を行なうため4000万円を見込んでいる。
経済ジャーナリスト
小野 貴史