TATERU事業で運営される会員と不動産事業者との土地マッチングは、デベロッパーなどを介さない一次流通モデルである。会員は中間マージンや二重課税を回避でき、不動産事業者は仲介手数料が増える。同社は土地在庫を持たないため財務リスクを軽減でき、“利益=現金”のフリーキャッシュフロー経営に取り組める。
こうして三者三様のメリットを創出しつづけ、会員数は前期比1万5869人増の10万6592人、会員と登録不動産事業者(1万2000社)との成約件数は前期比249件増の687件、管理戸数は3591件増の1万3187戸に至った。
17年12月期業績予想も、勢いが持続している。売上高505億4000万円(33・3%増)、営業利益53億6000万円(40・8%増)、経常利益52億8000万円(38・8%増)と発表している。
この勢いの渦中で、何を意図して新事業を仕掛けたのか。古木氏は説明する。
「フリーキャッシュフロー経営で得た現金の投資先として、4つの事業に取り組んでいます。4つの事業は、TATERU事業とシナジーを見込める事業と、リアルエステートテック企業としてリアルとネットを融合して展開できる事業、この2つのコンセプトで選定しました」
4事業をそれぞれ概観すると、リノベーション事業は「明確に他社と差別化できる要素はないのですが」(古木氏)とはいえ、TATERU事業で築いたプラットフォームを横展開し、昨年度には売り上げを上げている。クラウドファンディング事業はWEB上で1棟のアパートに対して1口10万円で出資を募り、賃貸収益から運用益を分配する。運用資産の評価額が下落した場合、同社が劣後出資者として下落分を補てんするため、30%以上下落しなければ元本に変動が発生しない。さらに投資物件が1棟なので、複数物件に投資するREITと違い、物件の収益状況がわかりやすい。
経済ジャーナリスト
小野 貴史