今期は5つの課題に重点的に取り組む方針だ。第一に、基幹業務システム改善と顧客管理システム導入による業務効率化、オンライン予約システム強化による利便性の向上。第二に、「トラベル・コンシェルジュ」の接客力と対応力の向上など教育の強化と人員の増強。来年度は40名程度の新卒採用を計画している。第三に、単価の高いクルーズツアーとニーズが上昇中のヨーロッパ小規模都市の商品化や、国内旅行商品の開発。第四に、法人顧客の開拓とベトナム現地法人を拠点としたインバウンド客の取り込み。第五に、ベトナムから第三国への旅行需要の吸収などアジア市場の開拓である。
18年3月期の業績見通しは、売上高240億5600万円(前期比6・8%増)、経常利益3億2300万円(7・7%増)。テロが頻発する国際情勢は不測の事態の連続で、旅行需要にも直結する。高山氏は「経営者として、世界がどう動くのかをキャッチして、意思決定ができるスキルを強化しなければならないと思っています。私の能力を高めることが当社にとって一番の課題でしょう」と強調する。
たしかに企業は社長の器以上に発展しないが、IPOを果たした創業社長で、こうも率直に語る例は珍しい。たぶん、IPOをめざす渦中で大学院に通った高山氏の背中は、社員に点火して、ハイブリッド戦略の推進力になったのではないか。旅工房は、マサチューセッツ工科大学教授のピーター・センゲが提供した「学習する組織」に向かっているようだ。
経済ジャーナリスト
小野 貴史