こうした差異が競争力をもたらしているのだが、社長の吉田仁平氏によると、事業開始の当初は難儀したという。
「当社は外資系企業の日本法人として設立されたので、作品を預けるに値する会社として認めてもらうまでには難しい時期がありました。苦労しながら出版社さんや作家さんとの直接契約を取り付けて、少しずつコンテンツを増やしました。購読者数の増加に伴って直接許諾契約が増えて、作品の充実により講読者数がさらに増加するというように、わらしべ長者的に事業を拡大できた面があります。今では市場が拡大し、さまざまなバリューチェーンが確立しているので、今から当社と同じモデルをつくるのは難しいのではないかと思います」
まんが王国の特徴は①知る人ぞ知る良作を発掘する独自性②ニーズに合った特集を高頻度で展開し、さまざまな指標から随所にレコメンド作品を表示する提案力③50文字以上の長文レビューが多数掲載して、コンテンツ選びをサポート――おもに、この3点である。
たとえば良作でありながらもあまり知られていない作品が、まんが王国での取り扱いを契機にブレイクし、単行本に換算すると数十万部の販売に至ったケースもある。吉田氏は「一般に知られていない作品を世に送り出すことには大きな意義があると思います」と自負している。
作品の選定は「トライ・アンド・エラーの繰り返しが大原則」(吉田氏)だが、読者の反応をフィードバックさせながら作品を見極めている。まんが王国の拡大に伴い、出版社からの売り込みも増えたという。さらに、まんが王国で蓄積したマーケティング・ノウハウを活用し、出版社・作家と共同でオリジナル作品の創出も開始した。
※取材日:2017年6月27日
経済ジャーナリスト
小野 貴史