まず挙げられるのは電子書籍・電子コミック市場の拡大である。インプレス総合研究所の調査によると、電子書籍市場の81を電子コミックが占め(15年実績)、16年の電子書籍市場規模は1940億円。年率14%弱のペースで拡大をつづけ、20年には3000億円に届くという。
新規ユーザーの開拓余地も十分に開けている。インプレス総合研究所の調査では、電子書籍を主に利用している世代は20~30代だが、この世代で有料の電子書籍サービスを利用した人の割合は低位にとどまっているため、電子コミック市場の成長余地は大きいという。
「まんが王国はユーザー、コンテンツ、サービスの3要素で成り立っています。オリジナルコンテンツの開発や販売方法で、まだまだ実施できることは多いですし、市場の拡大にともなって新しいチャレンジがどんどんできると考えています」(吉田氏)
今後は新事業として、オリジナルコンテンツを他の電子書籍運営会社に販売する電子取次や、コンテンツプラットフォームを活用した物販・デジタルコンテンツ販売・マーケティング支援などに着手していく。
同社の事業コンセプトには「日本が誇る漫画文化の発展に貢献します」と記されている。
吉田氏は「起業して間もない経営者には、成長に向けて本質を大事にしてほしい」と述べるが、自身も文化への貢献という本質に経営資源を集中させつづけて、現在の地歩を固めたのだろう。
※取材日:2017年6月27日
経済ジャーナリスト
小野 貴史