「コンサルタントの時は、役立ちませんでした。むしろ、足枷になっていました。コンサルタントのゼロベース思考は、僕の場合、完全にゼロで考えてしまったり、ロジカルシンキングではなく、感覚やストーリーを大事にしたりするので、先輩からは『お前もっと常識を考えろ』と言われていました。ただ、経営者になり、成果で対価をもらうようになってからは、かなり役立つことが増えました。誰もが考えたり、挑んだりしたこともないようなアイデアや視点で新たに提案する機会が多くなったからです」
もう一点、気になっていたのは独立のタイミングだ。何故、リーマンショックからまもない時期であったのか。
「独立した2009年12月は経済的には一番底でした。僕の感覚では結局、景気の良い時に独立した人は景気が良くないとうまくいかない人が多い。逆に、景気の悪い時に独立した人はどんな時でもうまくいく人が多い。あと、2009年の頃は不動産の仕事が動かなくなっていました。仕事が減って自分の成長も感じられないため、独立するには丁度良いタイミングだと思いました」
佐谷氏にとっても、マザーズ上場はあくまでも通過点に過ぎない。経営者として、さらなる先を見据えているはずだ。そこで、今後の展望をどう思い描いているのかも聞いてみた。
「僕たちのビジネスは結局何をしているかというと投資なんです。ヒト、カネ、システムを先行投資して、上手く行ったらフィーをもらうという仕組みです。軸としてはそうしたインベストメント型のコンサルティングをして、どんどん経営コンサルティングとインベストメントを掛け合わせたサービスを提供していきます。そうすることで、クライアントはリスクなくクォリティの高いコンサルティングを受けることができますし、かつフィーも成果と連動するのでリスクがありません。この仕組みを極めていきたいと思います。数値目標としては、マザーズに上場した当日にコミットした通り、5年後の時価総額1000億円を実現したいですね。そうすると、営業利益ベースで50億、コンサル単体で150億円の売上をクリアしないといけません。それはなかなか難しいので、M&Aも考えていくことになると思います」
当然ながら、コンサルタントなどの採用も積極的に進めていかなくてはならない。どんな人材像を求めているのだろうか。
「ベストは考えることが好きで、COPASSION(思いやりと優しさ、多様性を受け入れられる)のある方です。今の時代、ミッションがどうだからではなく、その会社の空気感に惹かれるとか、そのメンバーと働いている感じが凄く良いということで人が集まってきます。やはり、自分と合わない人と仕事をするのが一番つらいのではないでしょうか。チームとしてのパフォーマンスを最大化させていくためにも、思いやりや優しさは大切にしたいですね」
最後に、佐谷氏の経営に対するこだわりを語ってもらった。
「僕は時間軸に重きを置いています。実際、僕が尊敬している経営者は皆30年、50年、300年先を見ていて、自分の生きている時間もしくはそれ以上の時間使って、何かを成し遂げようとしています。そういう視点で見ると柔軟になれ、打ち手も広がります。戦略もより深くなりますよね。僕は、そこまで大きなスケールで見えていませんが、5年後もまた10倍にしたいと宣言するでしょうね。そうすると時価総額が1兆円になるので、今から実現するにはどうしたら良いかという観点で、ビジネスに取り組んでいけるようになります」
ライター
袖山 俊夫