サクセスアカデミーは、病院や大学、企業などが自前で設置する保育施設の運営を受託したり、認可保育園、小規模保育施設、学童保育などの公的な保育施設の運営で業績を伸ばしてきた会社だった。15年4月時点では、受託保育事業で172、公的保育事業で102の施設を持ち、業界内では第2位の事業規模を誇っている。
当時、出資していた大手商社が方針転換でサクセスアカデミーの保有株式を売却したい意向であることを聞いた岡本社長は、保育の領域でも人材サービスのノウハウやスキルが活かせると判断し、09年12月に同社を持ち株会社化したばかりの自社の持分法適用関連会社にした。さらに、今年6月1日から29日にかけて同社に対するTOB(公開買付け)を行い、持ち株比率を26.17%から50.1%へアップさせている。つまり、連結子会社化したわけなのだが、今回のTOBの狙いについて岡本社長は次のように語る。
「関連会社では人事権がなく、経営陣クラスで互いに合意していることであっても、現場の段階になると、なかなか浸透しません。また、保育に対する社会的ニーズが高まっているのに、そうした外部環境の変化に対応するスピードが遅かったりして、一気に改善するのには子会社化してより強力なタッグを組むのがいいと考えたわけです。それと、サクセスHDの創業者のハッピーリタイアをサポートする側面もありました」
介護分野の進出にあたっては、東京、埼玉、神奈川などで、有料老人ホームやデイサービスなど21施設を運営するサンライズ・ヴィラを13年10月に連結子会社化。入居率が80%台に高まるなど子会社化によるプラスの効果が着実に出ている。そうした一連のM&Aを成功に導いた秘訣を、岡本社長は「まず、主力事業であった人材派遣・紹介とのシナジーが生まれる相手を選んだこと。そして、一度手を結んだら、自分からは決して相手を裏切らないことです」と説明する。
最後に岡本社長にとってのIPOの意味を尋ねると、「社会的な責任が重くなることは覚悟のうえで、頑張ってきた社員に報いたかったのです。もちろん、IPOは自社の成長プロセスにとって単なる通過点でしかありません。そして、IPOをしてよかったことは、人間関係の広がりが出て、それが事業にもフィードバックされていることです」という。その岡本社長は優秀な若手にどんどん起業してほしいと願い、母校である関西学院大学での起業家育成にも力を入れている。