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創薬ベンチャーで難病に向かう! / 熱中の肖像インタビュー後編MediciNova, Inc.(メディシノバ)
代表取締役社長/CEO 岩城 裕一

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FDAからオーファンドラッグ、ファストトラックに指定

開発している医薬品の適応症は多発性硬化症、覚醒剤・麻薬・アルコールの依存症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クラッベ病(神経性疾患)、非アルコール性脂肪性肝炎、特発性肺繊維症、気管支喘息急性発作、悪性腫瘍など。有効な治療法が確立されず、有効な医薬品も開発されていない医療ニーズへの対応を使命に定めているのだ。これらに適応させる医薬品候補化合物は、キョーリン製薬、キッセイ薬品工業など3社から開発販売権利を取得している。

「当初から描いたビジネスモデルではなく、試行錯誤しながら組み立てた」と岩城氏は振り返るが、いわば“フェーズに応じたライセンスビジネス”を築き上げたのである。同社の優位性は権利の取得にあるという。権利の取得は同社からアプローチするのでなく、すべて相手先から持ち込まれるたのだが、外国の創薬ベンチャーが同じように権利を取得するのは容易ではないのが実情だ。持ち込み先はきわめて限られてしまうのが実情だ。

岩城氏は次のように説明する。

「どの製薬企業にとっても、ゼロから研究を進めてきた医薬品候補化合物は自分の子供と同じである。それを託すには、取引条件よりも、相当深い信頼関係で結ばれている相手であることが大前提となる。私は各社と長年にわたって信頼関係を築いてきた」。

臨床開発中のアイテムのうち、非アルコール性脂肪肝炎適応の臨床治験プロトコルが米国食品医薬局(FDA)よりファストトラック(優先承認審査制度)指定、クラッベ病適応の開発はオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)指定を受けた。突発性肺線維症はオーファンとファストトラックのいずれにも指定されている。オーファンドラッグ指定を受けると、7年間の排他的先発販売権が与えられるほか、補助金の受給や治験実施計画書の審査で優遇措置を受けられる。

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日本法人の株主は8000人で多くが長期保有

臨床開発中の医薬品が上市されるのは数年後の見通しだが、適応症によっては、世界で1兆円以上の市場が潜在しているという。

同社の14年12月期実績は売り上げが発生せず、営業損失は11億2900万円、純損失は11億2500万円で、15年12月にはさらに損失が拡大し、営業損失と純損失とも13億3900万円を見込んでいる。しかし投資家の期待は大きく、日本法人の株主は8000人に及び、個人株主の多くが長期保有者だ。なかには、同社が治療薬を開発中の特発性肺繊維症の患者家族も含まれている。

「当社の活動拠点は米国なので日本人のレーダーに入りにくいが、8000人の株主に支えていただいていることは、それだけ期待されているからだと受け止めている」

粛然とした表情を見せる岩城氏は、若手の医師たちに後に続いてほしいと望んでいる。

「医師が創薬ベンチャーに関わる意義は、治験に医師の深い関与が欠かせないことにある。自然科学の良いところは、先輩が築いた蓄積のうえで自分の仕事ができることなので、私は若い医師たちに喜んで経験をシェアしたい」。

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