もうひとつ、ゼットンの業態開発に深く関わるのは、クリエイティブディレクターである稲本氏のライフスタイルだ。稲本氏は1年の3分の1近くをハワイ中心に海外で過ごし、トライアスロンとマラソンの大会に出場する現役アスリートでもある。年齢は47歳だが、自覚するフィーリングは30代後半だという。
「30代後半から50代前半までが一番お金を持っていて、飲食や車、時計、洋服など一番消費が活発な世代である。私が自分の欲するものを店に投影すれば、同じ思いを持つ人たちが集まってくる。究極は、自分が客として入りたい店を開発している。それしかない」
いわば感性からのアプローチで、これを創業期の外食ベンチャー経営者にも求めている。
「飲食業で大切なのはマーケティングよりもフィーリングだ。FL比率など数字からアプローチせず、感性で店を作ることに熱くなってほしい。さらに付け加えれば、インバウンド需要などアテにするんじゃない!味覚にすぐれた日本人の特性を活かして、失敗を怖れずに、どんどん海外に出店して勝負せよと言いたい。そのほうがチャンスは多い」
そう説く稲本氏はさらに壮大な構想を描いている。ハワイ州で15~20億円の売り上げを達成したうえで、サンフランシスコを拠点とした全米への展開、あるいはニューヨークを拠点としたグローバル展開だ。日本の農業技術をハワイに移植し、農作物を輸入する構想も念頭に置く。あくまで変化を追い求めてゆくのである。