「例えば際コーポレーションの中島武社長やゼットンの稲本健一社長はスーパークリエイティブで、業態開発の天才だと思う。こうした天才と同じ土俵に立っても太刀打ちできない。自分たちが勝てる土俵はどこかを検討した結果、食品メーカーという立ち位置を定めた」。
メーカーにとって利益の源泉は工場の稼働率向上だが、それを導く出口が446店舗の飲食店(2015年9月末)と生活協同組合、さらに量販店である。業態開発も餃子やラーメンなどの商品カテゴリーに沿うなど、視点を工場の稼働率向上に置いている。BtoBとBtoCを組み合わせたビジネスモデルは川下を包含した。文野氏は「食の外部化にすべて対応できているのは、当社ぐらいではないのか」という。
イートアンドが製造販売する冷凍食品は約30アイテム(協力工場を含めると約150アイテム)で、食品メーカーとしては後発である。既存メーカーに対する競争力を何に見出しているのか。ここでもビジネスモデルを有効に活用している。
通常、メーカーの販売対象は卸売業者のバイヤーであり、消費者との接点を持っていない。一方、イートアンドは外食事業を通じて、店舗での売れ筋や来店客の食べ方の把握など、リアルな消費者マーケティングを実施できるのだ。この利点を活かしたヒット商品に「羽根つき餃子」がある。「油・水いらず」で人気のこの商品は、約1年半をかけて開発された。
「冷凍の羽根つき餃子そのものは珍しくないが、当社の商品はあくまで飲食店のクオリティを追及している。製造ラインの技術も革新して、冷凍商品だからこそ可能な技を取り入れた」(文野氏)。
外食事業の展開はブランディングにも利点を生んだ。既存メーカーの商品名には会社名が使用されるケースが多いが、イートアンドは店名の「大阪王将」を使用することで、店の臨場感を醸し出せる。
冷凍商品の開発には、2013年より女性の商品開発チームを編成し、朝食用の水餃子や機能性素材を使ったダイエットサポート水餃子などが開発されており、今後も引き続き「食品メーカーとしてクリエイティブな提案をしていく」と文野氏は抱負を示す。