「セブン・イレブンの強さはITと『OFC』と呼ぶSVの店舗指導にあるが、大量のSVを雇用できるのは大手コンビニぐらいで、多くのチェーン店はSVの戦力化に苦労している。この現状を見て、私はSVをアウトソーシングして、複数のチェーンを兼任できる仕組みをつくりたかった。そこで研究を進めているうちにMSを知り、SV代行サービスに組み立てた」
福井氏が開発したのは、どのチェーンにも使える汎用性のある調査項目ではなく、チェーンごとに理念や経営戦略などを盛り込んで、店舗評価や人事考課に反映させる仕組みである。しかも、調査対象の店長が結果を見て「なるほど!」「この調査結果を店舗運営に活用しよう!」と納得できる水準に仕上げた。
こうして開発したMS手法は競争力を発揮して、飲食店や小売店に加え、銀行にも導入が進み、さらにリピーターを増やして同社の成長を牽引したのである。巡回店舗数は13年11万店、14年14万店、15年はじつに35万店に拡大した。
SV視点でのMSを確立できたのは、同社の社員の半数以上が流通業界出身者で、現場に精通していること。これが強みになったのだ。
だが、いまやMSをメインとした流通支援事業は、売上高の10%強を占めるにすぎない。流通ノウハウをベースに店舗関連事業を派生させ、14年12月期の売上構成比は、スーパーなどの営業支援事業が50%、和菓子製造販売が26%、店舗運営事業が11%という内訳だった。
メインの営業支援は消費財メーカーをクライアントに、おもにメディアフラッグ株主の博報堂と組んで、TVCMと連動させたスーパーやドラッグストアなどの販売促進を手がけている。その担い手が北海道から沖縄まで約20万人を配置する「メディアクルー」で、適性によって流通支援を兼務、あるいはどちらかを担当している。メディアクルーへの教育は各エリアに配置したSVが担当し、さらに年3~4回の集合研修を実施するなどして質の向上を図っている。