風景をベースとしたコミュニティの創出は、どこへ向かおうとしているのだろう。楠本氏はコミュニティの変遷を地域や会社、学校などを「Community1.0」、ウェブ上に形成されるコミュニティを「Community2.0」と分類する。
これから拡大していくのは「Community3.0」で、そこではリアルな出会いで共感から共振が生まれ、トライアスロンやバーベキューに象徴されるようにライフスタイルが共有され、マーケットも発生するという。同社が創出し続けてきたコミュニティである。
今後は2016年3月に仙台市に2店舗、さらに多賀城市、東京では新宿、早稲田、茅場町と1カ月に6店舗を出店する。2017年には東京・浅草でシティホテル「WIRED HOTEL」をオープンさせる計画だ。下町で何かやりたいなと思っていた矢先に声がかかり、シェアハウスなども考えたが、ホテルを提案したという。
思うに、楠本氏は時代をモチベートし続けている。あとに続く飲食店経営者がどんどん登場すれば、衣食住に関わるビジネスが連動して、新たなライフスタイルビジネスが創出されるかもしれない。それは地域振興という喫緊の社会課題にも通じるが、楠本氏は後進の経営者たちに何を望んでいるのだろうか。
「日本には凄いポテンシャルがあるのに、世界デビューをしてこなかったと思う。故郷でも都心でもよいが、自分が好きになった地域をいっしょに育てるという発想を持てば、必ず仕事につながるタイミングが来ると思う。そんなことをぜひイメージしていただきたい。たとえばスペインのサン・セバスチャンは人口18万人だが、世界的な美食の街として知られている。世界には人口5~10万人で発信力を伸ばしている地域がたくさんあり、日本の地方にも数多く存在するはずだ」。
経済ジャーナリスト
小野 貴史