不動産投資開発が成長のエンジンに
市況の後押しを受けたとはいえ、5期連続の増収増益には何かしら固有の要因があるだろう。2014年12月に東証マザーズに上場した不動産投資開発会社、ビーロットの2015年12月期通期業績は売上高69億5000万円(前期比87・4%増)、経常利益6億5500万円(122・1%増)、当期純利益4億円(126・8%増)だった。
事業内容は不動産投資開発、不動産コンサルティング、不動産マネジメントの3分野で、業績を牽引したのは主に不動産投資開発事業である。セグメント営業利益は8億3900万円(80・8%増)。年間13件を売却し、1件あたりの売却平均単価が前期比220・7%増の4億7100万円となった。売却価格のメインは1~10億円だが、15年には価格帯が広がり、20億円超にまで拡大した。
不動産投資開発事業の推進力は、同社が蓄積した再生ノウハウである。稼働率向上、管理コスト修正、違法箇所の是正、最適用途への変更、テナント誘致などによって潜在価値を引き出した。一般的には現在のNOIから保守的な購入提示額を算定するが、同社は再生後の収益性=「未来価値」から算定しており、仕入れに強いのだ。
このビジネスを可能にしたのは、同社に蓄積された3つの強みである。①事業用不動産取引の豊富な経験と洗練された専門知識②多種多様な不動産プロジェクトを手がけたことによる柔軟な創造性③業界内外の上場企業上層部・富裕層・士業関係者等の広範なネットワーク。この3つの強みは業界歴が長く、信頼関係を築いた創業メンバーによるものだ。
社長の宮内誠氏は、都市銀行で不動産ノンリコースローンなどを担当したのち、東証一部上場企業で取締役投資企画部長を務めた。副社長の一人、長谷川進一氏は東証一部上場企業で常務として売買仲介部門を統括した。もう一人の副社長である望月雅博氏は、東証一部上場企業で常務として不動産再生事業を立ち上げ、統括責任者を務めた。
第一級のプロが揃って、2008年10月に同社が設立されたのである。宮内氏は振り返る。
「社員に不動産ベンチャーなどで実績を上げた人柄、能力ともに素晴らしいメンバーを得て、当初から社内外問わずパートナーシップとチームワークを大切に経営してきた。またリーマンショックの影響で、不動産市況は悪い時期だったが、皆それまで誠実に働いてきた実績により、人や案件のご紹介を頂きながら創業当初から業績を上げることができた。また不動産業界のモラル向上に寄与したいという思いがあったため我々は創業時から上場をめざしてチャレンジしてきた。
このチームワークと誠実な経営方針が成長の要因として大きいと思う。幸いにも創業メンバーは上場企業で役員を経験してきたので、組織体制や業務運営も上場を見据えた水準でスタートできた。」
3人の経営陣が上場企業役員という経歴から、当初から顧客には上場企業創業者や富裕層が多かった。これら顧客の要望を受けながら着手したチャレンジのひとつが、早期の地方展開である。まず社員が十数人だった設立2年後に北海道支社を開設し、その2年後に福岡支社を開設した。東日本大震災の影響により、お客様もリスクヘッジとして地方への分散投資を真剣に検討され始めたところ、同社の全国的な物件開拓力が他社との差別化につながった。
「当社の営業担当者が現地に根付いて、まず現地マーケットを熟知した。その上で一般に出回りにくい潜在売買情報を次々に収集、お客様へご提案してきた。」
経済ジャーナリスト
小野 貴史