「総合診療は難しいものです。150〜200くらいの病気を診断できたら優秀と言われており、地方ではこれを1人でやらなければいけません。しかも、医学はどんどん進歩しており、薬もどんどん開発されます。これを開業医が一人で全て行うのは不可能なことです。」
これは、メディカルビットのホワイトペーパー冒頭部分にも表されている。
引用
高齢化社会を迎えるわが国における今後の医療体制へのとりくみの一つにかかりつけ医制度があります。その中で医師不足が深刻な地方のかかりつけ医(開業医)はあらゆる疾患について診断を行わなければならず、自らの専門診療科以外の疾患に関しても幅広い知見が求められます。また、医学は日々進歩しており、数千ともいわれる疾患すべてについて一人の医師が知見を持ち続ける事は不可能です。
引用元:https://www.medicalbit.io/doc/mbc-wp.pdf
つまり、これからの医療体制では、患者が大きな病院を受診する前に、町の小さな診療所でかかりつけ医に診てもらうことになる。しかしかかりつけ医も人間なので、あらゆる分野のあらゆる疾患に対して最新の情報を把握しておくことは不可能だ。
そこでメディカルビットでは、電子カルテシステムでカルテの作成業務を効率化し、さらに電子カルテに診断支援情報を配信するという内容を目指している。
「現代の高層ビルが建てられるのはCADというソフトのおかげです。医療にもそういうもの(診察を支援するもの)があってもいいのではないかと考えたのです。」と山口代表。
メディカルビットの事業主体である日本メディカルソリューションズは、既に2015年より電子カルテ事業として『iMedsn』を提供している。
iMedsnは医師が簡単にカルテを作成できるように設計されており、テンプレートに従って主訴などを選択するだけで効率的なカルテ作成が可能だ。
「電子カルテの普及率はとても低く、使用している医療機関は全体の20%を超えているとは言われますが、会計システムの部分だけを使っている医師も多く、特に小さな診療所では活かされていません。その原因の一つは、入力に手間がかかるということです。日本は患者数が多いので、一般的な診察が5分で終わることも多いですが、カルテをきちんと入力するにはそれ自体に5分かかります。これでは忙しいお医者さんはとても使えません。そこで我々は様々な特許を申請し、一人の患者さんあたり30秒で入力できるようにしました。例えば、「鼠蹊部」という漢字を電子カルテに書くのは難しいですが、我々のソフトでは体の部位を選択したら自動的に「鼠蹊部」と表示されます。こうした数々の工夫により、医師の負担を大きく減らすことができます。」と山口代表。
iMedsnではさらに、選択された病例に従って自動的に診療支援情報が表示され、そこには治療方針や推奨処方例が表示される。処方例の中から必要な薬剤をタップすれば、なんとそのまま薬剤を注文することも可能だ。しかも薬剤の情報は常に製薬メーカーによりアップデートされるため、医師は常に最新の情報に触れることができる。そして、諸々の経費はiMedsnにより管理されるので医療会計業務も大幅に効率化する。
iMedsnはこの他に、専門医によって診断情報や治療情報が投稿される機能を備えている。つまり、医師たちの”知の集積”を目指している。これにより、各ドクターがそれぞれの知見を活かし合い、必要とする医療情報を参照することが可能だ。
「我々は電子カルテを売ろうとは思っていないのです。この電子カルテでは、医療の知の集積をやりたいのです。医師たちが医療情報を投稿して、現場で活かし合えるように。薬なんかも管理がとても大変で、電子カルテで参照できるようにします。つまり、我々は医療情報の基盤となるものを作りたいのです。電子カルテは基盤で、そこにいろいろなコンテンツを搭載することでマネタイズを図ります。例えば製薬会社のMRをカルテに組み込むことで、製薬会社のコストを情報配信料としていただく。こうしたスキームで既に特許も取得しています。」
ここまではiMedsnの話であった。ここからが本題であるメディカルビットへと移るのだが、メディカルビットでは、iMedsnの”医療の知の集積”にプラスして、AIによる医療情報の解析を導入する。そして、iMedsnはサーバーでデータを管理していたのに比べて、メディカルビットはブロックチェーンでデータを管理し、改ざんが不可能で世界中のどこからでもアクセスできる分散型ストレージを実現する。
ブロックチェーンに集積されたビッグデータをディープラーニングとしてAIに学ばせ、自動診断や診断サポートへと繋げる形だ。
メディカルビットでは、仮想通貨『MBCコイン(メディカルビットコイン)』が発行される。このコインのウォレット機能がiMedsnに実装され、医師は診療代をコインで受け取ることもできる。
また、MBCコインは患者にとっても有益なコインで、後述するiMedsn健康アプリで健康活動を行うとコインが付与されるといった仕組みだ。
iMedsn健康アプリはスマートフォンのアプリで、
引用
iMedsn健康アプリは診療所の診療情報とシームレスに連携します。自動お薬手帳の機能を始めとして、処方記録からジェネリック医薬品の情報を閲覧できたり、 カルテの診察情報をもとに、患者に必要と思われる医療情報コンテンツをピンポイントで配信します。また、お薬の飲み方や健康に関する知識を、ドラマ形式で楽しめる「健康サポート動画」などもご覧いただけます。
引用元:https://www.medicalbit.io/doc/mbc-wp.pdf
つまり、iMedsn電子カルテと連動したアプリで、さらに医療情報コンテンツも配信される。そして、こうしたコンテンツを閲覧したり、日々の運動を実践すると、健康活動を行ったということで『MBCコイン』が付与されるという仕組みだ。
「当社の事業目的は医療情報基盤を構築し、医療の質の向上と医療費の削減を実現することです。その基盤上で医師側には医療の地の集積の共有、国民側には健康行動を促進します。この医療情報基盤上で流通するコインがMBCです。また、MBCコインが取引可能になることにより、さらに当社の医療情報基盤と外部のサービスとの連携が可能になると考えております。」と山口代表は語る。
ここまでがメディカルビットと、その前身であるiMedsnの概要だが、メディカルビットの土台はほとんどiMedsnで完成しているという印象も受ける。今回のICOによる調達資金はどのように使われるのかが気になるが、ホワイトペーパーによると、
・クラウド型電子カルテ(iMedsn電子カルテ)のさらなるブラッシュアップ(診断支援情報を組み込む)
・医療AIを自社開発し、iMedsn電子カルテに組み込む
・医療用データのデータベースとしてブロックチェーン技術を用いたプラットフォーム開発を行う
とのことだ。たしかに、電子カルテのような医療情報とブロックチェーンは親和性が高いし、AIによるディープラーニングにもうってつけだろう。ただし、現在ホワイトペーパーには具体的な技術仕様は書かれておらず、開発はこれからといった印象だ。
こうなると、どこまでこのプロジェクトに現実性があるのかが気になるところだが、そこは日本メディカルソリューションズ社のこれまでの実績が担保となるだろう。
同社は平成24年に設立され、資本金は2億円以上、15件以上の特許を出願しており既に3件が承認されている。(特許第6117483号、特許第6177527号、特許第6177546号)
また、平成24年度ヘルスケアサービス創出サポート事業として認定され、経済産業省サービス産業強化事業費補助金(地域ヘルスケア構築推進事業費補助金)が付与されている。ICOの実施においても、当局からきちんと指導を受けながら進めているとのことだ。
「当社が目指しているのは医療情報基盤の構築です。その基盤に流通させる医療情報は高度な個人情報となります。つまり、絶対にハッキングされない、改竄されない、またダウンタイムを限りなくゼロに近づける必要があります。このような事の実現の為には、現時点でブロックチェーン技術が最も適していると思われます。ですので、当社が構築する医療情報基盤をブロックチェーン技術を用いて構築しようというのが最初にブロックチェーンに関わった理由です。
また、当社の目指す事業は装置産業ですのでどうしても必要資金が先行します。が、残念がら日本において当社のステージでベンチャーキャピタルなどからまとまった資金を調達することは困難です。そこで、ICOという手段を用いてまとまった資金を調達し、一気に医療情報基盤を構築しようと言うのが今回のICO実施の動機です。」と山口代表は語ってくれた。
ここまでを概観すると、メディカルビットというプロジェクトは、iMedsnという電子カルテ事業をさらに拡充させ、ブロックチェーンによるデータ保存とAI解析、健康アプリの導入、MBCコインの流通といったサービスを付帯させるものだということがわかる。そのための資金調達としてICOを実施するということだ。ブロックチェーンとトークンに直接関わってくる部分は、まさにデータ保存の部分と、MBCコインだろう。
尚、MBCコインはEthereum上で動作するERC20トークンだが、iMedsnシリーズのデータベースプラットフォームについては今後独自のブロックチェーンを構築する予定だそうだ。また、量子暗号化技術を開発する企業と提携し、より安全に医療情報を保管できるプラットフォームを目指すともホワイトペーパーには書かれてある。
諸々の開発はこれから進んでいくものだと思われるが、同社のこれまでの実績がこのICOへの期待を募らせている。
山口代表は最後に、そもそも医療分野に関わるきっかけとなった出来事を次のように語ってくれた。
「阪神大震災を隣の岡山県で経験しました。知り合いの医師が応援で神戸に入りしましたが、倒壊した病院で全くカルテが参照できず苦労したと言う話を聞き、医療データこそ安全なデータセンターで保管し、有事の際は自衛隊無線で参照可能にする(当時はインターネットがまだ普及していませんでしたので)と言うことを実現したいと考えるようになりました。その後、ASP事業会社を立ち上げ、医師のネットワークを構築し研究を重ねてき、2012年に医療情報基盤構築のために日本メディカルソリューションズを立ち上げました。そして、今のメディカルビットに至ります。」
メディカルビットの一般ICOは6月を予定している。医療情報とブロックチェーンを融合させるこの事業に是非とも期待したい。
山口 浩行 代表取締役 社長
株式会社岡山システムサービス入社
デューイ・コーポレーション株式会社 代表取締役
株式会社サンマルク (現 株式会社サンマルクホールディングス 東証1部 3395) CIO
ユニバーサルソリューションシステムズ株式会社 代表取締役(JASDAQ上場)
ウエルライフコミュニケーションズ株式会社 代表取締役
マクロコム株式会社 代表取締役(現任)
当社 代表取締役(現任)
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