大同メタル工業においてはこの実証実験で得られた知見を踏まえ、他の製造事業者での実証を新たに進め、製造業にとってより有用なデータを収集し、VR研修ツールの商品化に繋げていく。なお、本協業は2018年10月に開始した日本政策投資銀行が主催する東海オープンアクセラレーターをきっかけに、大同メタル工業と共同で実施している実証事業である。【背景】慢性的な人材不足、若者の離職率増加、海外人材の増加などが近年ますます深刻化していく中で、いかにして技術を継承していくのかが、製造現場における大きな課題となっている。このような背景の中、大同メタル工業においても確実な技術の継承に加え、従業員個々のレベルをスピーディかつ均質に上げたいという製造現場の要望は大きく、教育方法の改革が求められていた。【実証実験概要】大同メタル工業のグループ会社における新入社員教育現場にて、VRを活用した現場実証を実施。現場感覚を学ぶには、座学や動画だけでは不十分という根本的な課題に対し、製造現場での作業者の目線や手順を自身が体験しながら進められるクイズ形式を用いた独自のVR研修コンテンツを通じ、VR活用の有効性を検証した。スペースリーの開発したVR研修のためのクラウドソフトでは、月々数万円で事業者が自らかんたんに様々なシナリオやクイズなどが設定された高品質なVRコンテンツを制作して活用することが可能になる。今回の実証においても、大同メタル工業の現場の研修担当者が、アイディアが思い浮かんだその場でマイクロラーニングのVRコンテンツを制作する形で実証実験を行った。【実証結果】目線や体を頻繁に動かすといった、現場での経験が求められる作業は、座学や映像研修だけで学習することに限界があり、その点で、疑似体験を伴うVR研修は効果的であった。また、ゲーム感覚で楽しみながら臨場感のある学びがいつでもどこでも可能なであることもVRの大きな特徴である。新人研修の間、休み時間中に研修生が自らVR研修コンテンツを手に取り、学び始めた光景はこれまでの研修においては無かったものだったそうだ。このようなVRが現場感覚を学ぶのに適し、また楽しく能動的に研修者が学ぶことが可能となり、結果として、事前研修が33%効率化するととともに、習熟度が43%アップという結果となった。また、現場の声からも定着率向上やOJT効率化に効果的であることが示されたと言う。【今後の展開】製造現場におけるVRの導入に対しては、「活用シーンや導入効果のイメージが湧かない」といった不安や現場の担当者が自作することに対する心配の声も存在する。実際に、製造現場の研修内容は、ベテラン作業員が培ってきた経験・ノウハウの結晶であり、VRコンテンツに織り込む作業は、現場のセンスやコツが必要だ。そのような場合には、実証実験のパートナーである大同メタル工業を販売窓口とした導入サポートを行う。手軽でかんたんな活用方法が、中小事業者をはじめとしたより多くの現場でVR研修が活用されていくためには重要である。今後、スペースリーでは製造分野の研修VRをはじめとして、360度VRが日々の当たり前になるべく事業開発を邁進していくと言う。◆具体的な効果についての補足