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サービスの優位性を裏付ける安全性と信頼性の公的認定 / 熱中の肖像インタビュー後編株式会社いい生活
代表取締役社長/CEO 中村 清高

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無借金経営で資金ニーズはなかったが、営業対策でマザーズに上場した

同社は設立以来、無借金経営をつづけている。サービス構築までは中村代表を含む取締役が二年間最低報酬のみの時期などがあったが、サービス開始後の資金繰りの苦労はなかった。その秘訣は不動産業界の慣行に着目したことにある。導入先に対して、家賃と同様に当月の利用料を前月に払ってくれるように依頼すると「どの会社も『そりゃ、そうだな』と納得してくれた」(中村氏)。資金ニーズがなかったのでIPOを目指すつもりもなかったが、ある営業先の社長のひと言で方針が固まった。

大手不動産管理会社の社長から「おたくにシステム業務を任せたいが、非上場会社と随意契約を結んだ前例がない。おたくは帝国データバンクで調べると優良企業と評価されているが、資金調達力や永続性は大丈夫なのか?」と問われたのだ。さらに他の営業先でも、担当者が稟議書に「事業の継続性に問題がない会社」と記載する根拠を欲しがっていた。

「じゃあ、IPOでもするか」。ゴールドマンサックス証券で公開引受業務を担当していた中村氏をはじめ経営陣にとって、IPOは手馴れたステップだった。「個人的にはサントリーさんや上場前の出光興産さんのように、非上場の優良企業が好きだ」(中村氏)というが、人材獲得や社員の経済的なメリット、自社株式に通貨的価値を与えることなども考え、設立7年目に東証マザーズに上場したのである。

一方、同社は情報産業化を推進するなかで、不動産市場の透明化も志している。

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「情報産業を司る者にとって一番大守らなければいけないことは、自分自身の身の潔白だ。できないことをできると言ったり、同じサービスを知識のない相手には高い料金で販売し、うるさそうな相手には料金を引き下げたりすることなどは、あってはならない。我々はそのベースをつくるという信念をもっている」。

不動産業界には同様のサービスもあるが、「ESいい物件One」の優位性は安全性と信頼性が認定されたことにある。2014年に、総務省が公表した指針に基づく「クラウドサービスの安全・信頼性に係る情報開示認定制度」で認定を取得。さらに2015年には、総務省が後援する「第9回ASPICクラウドアワード2015」で「社会・業界特化系グランプリ」を受賞した。

毎年、新入社員に語りかけている言葉は「やるべきときに、やるべきことを、きちんとやる」

中村氏のバックボーンにも触れておきたい。中村氏は、中学・高校の6年間を有名進学校の栄光学園で過ごした。25期生だった。学業成績はまぁまぁだったが、素行の逸脱が著しく、6年間で校長室に呼び出されたのは約15回。開校以来もっとも多く呼び出された生徒と自覚している。自宅には生活指導担当の教師がたびたび訪問してきたという。

当時の校長は上智大学文学部歴史科科長から転じたドイツ人神父のグスタフ・フォス氏だった。フォス氏は、生徒たちにいろいろな例え話をしながら、一貫してこう諭していた。

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「やるべきときに、やるべきことを、きちんとやること」。

在校当時の中村氏は、フォス氏の話をそれとなく聞き過ごしていたが、この言葉だけは記憶に残った。社会人になってからは心に響くようになり、いまでは座右の言葉になった。毎年、新入社員にも「やるべきときに、やるべきことを、きちんとやること」と語りかけている。

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不動産業務支援システムをクラウドで提供 導入先は1300法人・3000店 | 『熱中の肖像』vol.32  株式会社いい生活 中村 清高社長 前編

インタビュアー

株式会社KSG
眞藤 健一

経済ジャーナリスト
小野 貴史