この間、丸山珈琲の新規参入に業を煮やした他の輸入事業者が、生産者に手を廻して、丸山珈琲への出荷を止めさせようとする動きもあったという。だが、どの生産者も、言い値で仕入れてプライドを満たしてくれる丸山珈琲を優先した。
さらに決済方法も生産者にメリットを与えた。通常は納品後に支払うが、小規模生産者の場合には丸山珈琲は注文時に支払い、生産者の資金繰りをサポートしている。この決済方法は一方で自社の資金繰りを圧迫する。解決の手段にしたのがファンドの組成による資金調達で、ファンド運営会社・ミュージックセキュリティーズ(東京都千代田区)に委託して、小口の投資ファンドで支払い原資を賄ってきた。
これまでに8本のファンドから約3億円(現在稼働分含む)を調達して、先払いをつづけている。生産者を支援する取り組みは海外で評価され、04年に丸山氏は、ヨーロッパ・スペシャルティコーヒー協会主催の若手起業家賞を受賞した。以上が、丸山氏を社会起業家ではないかと思った所以である。
丸山珈琲の従業員数は概算で社員60人とアルバイト100人の160人。この規模だと社長が現場まで統括するのが通例だが、丸山氏は、年間150日前後を費やして生産地を巡回しているため、従業員と直に接する時間が限られている。「社員を採用するようになった当初から1年の半分近くを海外で過ごしているので、従業員に違和感はないようです」(丸山氏)というが、それでも海外からの遠隔指導には限界があるのではないか。
その限界を補っているのが、丸山氏が「外圧」と呼ぶコンサルティング会社の起用である。大手コンサルティング会社と契約し、業務体系や人事制度など経営の仕組みづくりやCS調査、定点観測などを行なっている。
今後の事業で計画しているのはパリへの出店である。丸山氏は「今年の海外出張は200日に増えるでしょう」と闊達に笑い飛ばした。
経済ジャーナリスト
小野 貴史