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優良コンテンツ獲得、成長加速のため、M&Aをフル活用事業売却も果断に決行、新規事業にシフトする経営戦略 / 熱中の肖像インタビュー後編株式会社アエリア
代表取締役会長 長嶋 貴之

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ネットビジネスの生命線ともいえるのが技術力である。アエリアは、優れた人材を得るため、社外の技術者とのネットワーク作りに力を入れてきたが、もう一つ力を入れているのが、M&Aの活用だ。

オンラインゲームはアエリアにとって事業の柱の一つ。しかし、ゲームの世界は浮沈が激しい。ヒット作に恵まれれば、一攫千金も夢ではないが、もし作品が不発に終われば、莫大な開発費が回収できないこともある。ゲーム事業を継続させるためには、優良なコンテンツを安定供給しなければならない。それには、優良なコンテンツを抱えた企業をM&Aによって手中に収めるのが手っ取り早く、確実な方法の一つなのだ。長嶋会長は、次のように説明する。

「オンラインゲーム関連でM&Aを決める際にはまず、その企業の技術力を見極めます。ゲーム開発チームのレベルは大事な要素です。それに、例えば魅力的なキャラクターを持っている会社であれば、ゲーム内やリアルグッズなど様々な販路と組み合わせて考えることができますので、M&Aの対象となるのは、ゲームメーカーとは限りません。ゲーム以外でも技術や開発クオリティなど、色々な側面から投資先として有望な企業を判断しています」

それだけではない。M&Aは、アエリアにとって成長を推進するエンジンの役割も担っている。長嶋会長は、「ソフトバンクにいたとき、M&Aが事業拡大のための有力な手段になることを学びました。市場の変化が大きい中で、対応するスピードを上げることが大事だと考えています」というのが持論で、今後もM&Aを積極化するといい切る。

一方、M&Aだけでなく、ときには割り切って事業を売却することも辞さない。創業以来のコミュニティサイト事業を楽天に譲渡したのがその好例だ。事業売却によって得た資金を次の新規事業に回す。そうした事業の売買も、アエリアの経営戦略の特徴といえよう。

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「事業売却においては、自社に圧倒的なアドバンテージがあります。その事業の裏表を知り尽くし、シビアな評価ができるのは自分たちだからです。例えば、自社独自のシビアな視点で将来性がないと感じた事業でも、世間的に評価されていれば、高値で売り抜けることもできます。とはいえ、苦労して育ててきた事業を手放すのはつらいものです。愛着もありますしね。しかし、そこを冷静に判断して売り時を見誤らないのが、経営者の資質だと考えています」

アエリアは、中期的な経営戦略としては、オンラインゲーム事業をメーンとする方針だ。「ゲームの世界では、プラットフォームの変更が大きなビジネスチャンスになります。当社はそうした変更を経験し、対応するノウハウも蓄積しているので有利なのです」と、長嶋会長は自信をのぞかせる。

ただし、オンラインゲーム以外の事業ももちろん、虎視眈々と狙っているそうだ。

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「過去の成功体験にとらわれず、チャレンジする価値を見い出すことができるのであれば、リスクを冒しても攻略する。それが私の信念です。信念を持って真面目に事業に取り組んでいれば、人材もノウハウも集まってきますし、チャンスを見極める眼力も養われていきます。カードを着々と集めておいて、チャンスが到来したときに切ればいいのです」

長嶋会長は、『フロー体験・喜びの現象学』という学術書を愛読していて、「苦しみをどうやったら楽しみに変えられるのかということを、その本から学びました。企業経営では苦労も多いのですが、そうした術を身につけることも経営者には必要です」と語る。「企業の規模は、経営者の事業構想よりも大きくなることはありません。例えば、経営者が売上高20億円を必死で目指さなければ、10億円の達成も難しいでしょう。経営者は志を高く持たなければなりません」と、長嶋会長は起業家予備軍にエールを送った。

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誰でも気軽に楽しめるオンライン無料ゲームを強化 スマートフォンの普及を追い風に、事業が急成長 | 『熱中の肖像』 株式会社アエリア 長嶋貴之会長 前編

インタビュアー

株式会社KSG
眞藤 健一