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ネットの普及を追い風に毎年30%の増収増益を続ける5年後にはアジア№1のPR会社を目指す / 熱中の肖像インタビュー後編株式会社ベクトル
代表取締役 西江 肇司

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大病を患い8年間の休養 その分、今を生きようという気持ちが強くなった

西江社長はバブル経済真っ盛りの頃、当時もてはやされた「学生起業家」として活躍していた。関西学院大学在学中にイベントサークルを立ち上げ、それを母体に学生向けのセールスプロモーションの会社を興した。今のベクトルである。「自分の好きなことを、ごきげんにやる。これが僕の信条。実は、大病を患って8年間仕事ができなかったことがあって、今を生きようという気持ちがより強くなったのかもしれませんね。ただし、僕は子供のときから好きなことばかりやってきたので、それではさすがにまずいだろうと、一念発起し会社を作ったんです」。

TV局と組んで、商品のタイアップ企画を手がけたりするうちに、PRの重要性に気づく。こんなきっかけがあった。クライアントからTVでの商品紹介を要望され、PR会社に依頼したのだが、予定の番組で商品がオンエアされなかった。苦い経験をもとに、それからは「自分たちでやろう」と、自社でPRも担当するようになった。2000年になると、ベクトルは、宣伝PRをメーンとするPR会社に本格的に衣替えした。

後編②

時代は追い風が吹いていた。バブル経済崩壊後の「失われた20年」で日本経済は低迷、多くの企業が軒並み広告予算の大幅削減を余儀なくされた。限られた広告費を有効活用するため、リーズナブルな広告料金で大きな宣伝効果が期待できるPRに、注目が集まるようになったのだ。とりわけ、リーマン・ショックがその流れに拍車をかけた。もう一つ、大きなトレンドがある。それはネットの急速な普及、SNSといった新たなメディアの登場だ。既存のマスメディアを介在させなくても、対個人へのダイレクトコミュニケーションが可能になった。そこにPRの余地が広がっている。

PR会社のその先も見据え、アジア№1PR会社を目指し猛進

日本におけるPRの市場規模は推定で約1000億円、広告市場全体の中では60分の1程度を占めるにすぎない。しかし、西江社長は、「PR市場は、毎年二桁くらいは伸びている感じです。当社の売上げ・利益も今後5~10年間は30%ずつ増やせるでしょう」と鼻息が荒い。現在、ベクトルでは年間約1,000以上のPRプロジェクトを抱え、子会社であるPRTIMESのクライアント数は累計1万社を超えるという。「PR会社として既に国内では圧倒的な№1の地位を築いているので、5年後にはアジア№1のPR会社にしたい」と意気込む。

最新ITを活用した新しいPRも、次々と取り入れている。例えば、ネット動画によるPR。ネットでいろいろなサイトを検索していると、画面で動画が自動的に流されていることがあるが、PRであるケースが多いのだ。「企業ニュースをビデオリリース化(動画コンテンツ)し、さらにその動画にアドテクをかけターゲティングをすることで、届けたい人に、動画を届けることが出来る。関心のある動画が流されていれば、PRとは気づかずに、自然に情報を受け取るはずです。」と西江社長は説明する。同社では、企業のIR対策をサポートする「IRTV」も展開し、社長インタビューの動画や、2~3分に編集した企業紹介のビデオなどを配信しているという。ネットには媒体として無限の可能性がある。「ネットなら自前で動画を流せます。ITはどんどん進んでいるので、オンデマンドTV局でPRをするような時代になるでしょう」。

同社は、海外でのPR事業の成長性が高いと見て、すでに中国、タイ、ベトナムといった東アジア諸国に進出を果たしている。アジア№1のPR会社になるための布石である。海外事業の拡大ではM&Aも視野に入れており、西江社長は、「現在は景気がよく、多くの会社がオーバーバリューですが、、景気のダウントレンドに入ると、アンダーバリューで会社を買収できると思うので、そのタイミングを狙ってます。」という。それだけでなく、チャンスがあれば、国内でのM&Aの可能性もある。「PRの関連事業が対象になるでしょう。ただし、IT企業は可能性が低いですね。ITはあくまでPRの手段の一つですから、コラボで最新技術を導入したほうがいい。クライアントとのパイプを太くするのが先決です」。

後編③

PRの概念を変えてきたベクトルは、いずれPR会社の枠にも収まらなくなるかもしれない。ITの発達によるコミュニケーションの変化は目まぐるしく、PRの役割や位置づけも様変わりしているからだ。「ベクトルは“コミュニケーションファーム”を目指している」という西江社長は、PR会社のその先も見据えているようだ。

 

前編はこちらから・・・

インタビュアー

株式会社KSG
細川 和人