同社が新規事業の責任者を選定する基準は①みずから手を挙げること②何が何でもやり抜くという執着心を持っていること。当然、ビジネススキルも基準に含まれるが、白石氏はこう見ている。「スキルは環境のなかで培われるもの。私は若い頃から一流の経営者と接する機会が多かったので、その方々との会話のなかから経営の考え方やスキルを学んだ」。
新規事業ではパーソナル事業、インセンティブ事業、ヘルスケア事業がとくに好調に推移し、2015年3月期の連結経常利益は33億円、今年度は43億円を見込んでいる。JASDAQ上場時の経常が8億円だったので、10年で約6倍に成長した。同社が実践した経営には、何が原理原則になっているのだろうか。
白石氏は4つを挙げる。第一に、変化できる者が生き残るというダーウィンの進化論の実践。第二に、絶対的な正義感を持って、正々堂々と事業に取り組むこと。第三に、会社全体のレベル感を高めつづけること。「電話対応の速い会社はオフィスも清潔で、そうしたレベル感の高い会社の多くは成長している」という。
そして第四に、誰かから必要とされる事業を行なうこと。「これをキレイごとと言う経営者もいるが、誰にも必要とされない事業が淘汰されることは自然界のルールである」と白石氏は強調する。
「現に倒産した大企業を見ても、その企業が存在しなくても社会が困らないから倒産している。急成長した企業はチヤホヤされたりしているうちに、つい自然界のルールを無視して、自分中心に物事を考えてしまいがちになるが、そうなると環境が変わった途端に淘汰されてしまう」。
白石氏は若手ベンチャー経営者から経営相談を受ける機会も多い。伸びる経営者と伸び悩む経営者の差異は「素直かどうか。素直な経営者は吸収力があるから伸びる。また、伸びる経営者は物事が上手くいかない原因を環境に求めず、自立した心を持っている」(白石氏)。
取材に訪れたベネフィット・ワンの本社オフィスは、凛とした空気感に満ちていた。これも白石氏が説くレベル感の現われだろう。
取材・文/経済ジャーナリスト 小野貴史