さらに、09年5月の日経BP社が運営する日経メディカルオンラインとの業務提携で約2万人の会員が増えたのを機に、新たな切り口のサービスとして10年5月からスタートしたのが「薬剤評価掲示板」である。薬剤評価掲示板は現在約2400種類の薬剤について、効果やコストパフォーマンス、副作用など会員による6項目の評価結果をレーダーチャート化し、処方実感として投稿されたコメントと併せて表示している。
「累計のコメント数は40万件を超え、1薬剤当たり平均160件以上となっています。医師は診ている患者さんの症状によって、専門領域以外の薬剤の使用を検討することがあります。そうしたとき、製薬メーカーから提供される情報とともに、このコメントに目を通すことで的確な判断が行なえるようになるのです。いわば薬剤版の〝食べログ〟のようなサイトです」と石見社長は語る。
いまや薬剤評価掲示板は、医師にとって欠かせない薬剤情報の収集ツールとなっており、今年6月にMedPeerの会員は10万の大台を突破した。日本の医師の3人に1人が利用していることになる。製薬会社の広告料が主な収益源なのだが、世界最大手のファイザーをはじめ主要製薬メーカーがクライアントとして顔を揃え、業績は12年9月期に初めて黒字化。また、14年6月には東証マザーズ市場への株式上場も果たしている。
ただし、11年には20人いた社員が半分以下に減ってしまう厳しい局面もあった。「役員間の意見の対立や資金繰りなどで忙殺されてしまい、経営理念の具体化に向けたビジョンをどう描いているか、そして一人ひとりの社員にどのように行動してほしいと考えているのかを、自分の言葉で直接語りかけることが疎かになっていました」と石見社長は振り返る。
石見社長は、冒頭で紹介した「Health 2.0 ASIA-JAPAN」を今後も定期的に開催していく考えでいる。なぜなら「Supporting Doctors, Helping Patients.」の経営理念の実現に近づく一つの道であるからなのだ。また、知の共有と連携とともに、自身の経験に基づいた経営者に必須な要素を後進の若き起業家に伝え、日本のヘルステック分野における新しいビジネスの創造の礎の場に育てあげていくことだろう。