スーパーデリバリーの会員である国内メーカー約1000社の内、半数以上がSD exportにも登録し、海外の小売店も1500店ほど集まっています。既に取扱っているアイテム数は12万を数え、さらに商品力を高めていくことで、海外の小売店の利用が加速していくでしょう」
事業立ち上げに際しての小方社長の信念の一つが「他に誰もやっていない新しいものであること」で、SDexportもそれに当たる。そして、そうした小方社長の起業の原点を遡ると、北海道大学の学生時代に招待された米国視察ツアーで、現地の起業家から「自分の向上心や好奇心が満たされる仕事が見つからなければ、自分で作ってください」とアドバイスされたことに行き着く。ただし、卒業してすぐの起業には至らず、コンサルティング会社に入社する。
「自分には起業するために必要な2つのものが足りないと思ったからです。まず『経営哲学』で、社員から『何のために働いているのでしょうか』と尋ねられたとき、明確に答えられるリーダーでないと、組織はまとまりません。もう一つは『誰に何を売るか』です。ビジネスモデルといっても複雑なものではなく、極めてシンプルなもので、ここを間違うと社員を幸せにはできないと考えました」
結局、小方社長は30歳のときにコンサルティング会社を辞め、中国・北京の語学学校に留学する。確かに、改革・開放政策で中国経済が成長のとば口にあったことも魅力的に映った。「しかし、それより何よりも、山籠もりではないですが、誰も知り合いのいない中国で一人になって、自分は一体どういう人間で、何ができるのかを真剣に考え、起業に向けて整理したかったのです」と小方社長はいう。
半年もすると片言の中国語を話せるようになった小方社長は思索の傍ら、街中に出て現地の人の会話を楽しんだ。すると「面白い日本人がいる」と興味を持たれ、友だちの友だちを紹介されるうちに、めったには会えない現地のトップの人たちとの知遇を得るようになる。当然、その場では自分がどんな人間なのかを中国語で一生懸命に説明する。結果、そうしていくなかで、課題だった自身に対する洞察も深まったそうだ。
また、ある華僑の実業家と懇意になり、鞄持ちをしながら教えられたことも、小方社長の経営者としての大きな精神的支柱となっている。「日本人は相手の人が信頼できるかどうかを、本音の部分では学歴や勤務先などを見て決めています。しかし、彼らの考え方はまったく違っていて、信頼の対象はあくまでもその人、個人なのです。そして、その人と信頼関係を育むことに努力を惜しみません」と小方社長は語る。実は、ラクーンの事業はどれも、これまで積み上げられてきた顧客との信頼関係の上に構築されているのだ。