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「経営哲学」と「ビジネスモデル」の構築起業家が起業家たる絶対条件 / 熱中の肖像インタビュー後編株式会社ラクーン
代表取締役社長 小方 功

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社員が自然と全力で走り出す組織

通常、卸問屋の多くは自社の効率化ばかりに目が向き、売れ筋商品ばかりを扱ったり、手間のかかる小ロットの取り引きを敬遠したりする。特にファションや生活雑貨では、メーカーが100種類の新しいアイテムを作っても、卸問屋が扱うのは売れ筋の10種類前後ということがざらにある。すると、メーカーの生産効率は悪化し、地方の小さな小売店は欲しいものがなかなか手に入らない。

そうした非効率や不便を解消するためにスタートしたのがスーパーデリバリーで、他の卸問屋の売り手優位な姿勢とは一線を画す。「全国各地の中小メーカーに直接足を運び、困りごとが何かに耳を傾け、その声を自分たちの〝教科書〟にしながら、自分たちが進む方向を見定めています」と小方社長はいう。国内約1000社のメーカーから毎日800を超えるアイテムの新着情報が寄せられているのも、その積み重ねに裏打ちされた信頼関係があればこそ。そして、そうした商品力に魅了された約4万5000店もの日本各地の小売店が、貴重な仕入れ先として利用しているわけなのだ。

まさに小方社長のビジネスモデルは、経営理念である「企業活動を効率化し便利にする」ことを画期的なサービスとして具現化し、メーカーや小売店に提供していくことに他ならない。だから小方社長をはじめ全社員が、どんな困りごとにも敏感であろうと常に好奇心を高め、そしていざ直面した困りごとが難しい内容であっても解決できるように、向上心を日々燃やし続けているのだろう。

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「世界中に日本の商品を売ろうよ」というビジョンを掲げ、2人の社員にSDexportの立ち上げを担当してもらう際もそうだったのだが、小方社長はいつも「これやってみてくれないかなあ」と相談・お願い口調なのだという。当の2人は輸出業務の専門家ではない。しかし、実現した暁には顧客に喜ばれる仕事であることがわかっている。だから好奇心や向上心を持って取り組めるよう計らうことが大事で、「君に任せた」というような命令口調である必要はないのだ。そうやって生まれた画期的な事業として、掛売り決済代行サービスの「Paid」、受発注を一元管理する「COREC」などもある。

「経営者は何も万能である必要はなく、自分の無力な部分を認め、できる人にお願いをし、素直に感謝すればいい。そこで上下関係にとらわれない信頼関係が、初めて生まれるのではないでしょうか。それには、この仕事をしたら、その先にどのような景色が広がっているのか、先々のビジョンを分かりやすく説明する能力も必要です。そうすることで、一人ひとりの社員はいつもワクワク、ドキドキしながら全力で走れるようになるのです」

この言葉こそ、小方社長の経営哲学そのものであるのだろう。小方社長が初めて社員を採用したのは創業から7年後のこと。前回紹介したように、経営哲学なくして組織をまとめることは覚束ないと考えるからである。また、そうした小方社長だけに、最近の若手の起業家のなかには事業計画書を片手に多額の資金を集め、人材も含めて大きく事業を始めたがる人が多いことに首をかしげる。

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「お金があるから成功するわけではありません。他人資本が多くなれば、目先の利益も追わなくてはならず、楽しい仕事ができなくなるかもしれない。何よりも大切なのは、自分自身の経営哲学を打ち立て、誰に何を売っていくかを明確にし、そこから決してブレないことです。そうしていけば、時間はかかっても、事業は大きくなっていくでしょう」

これから起業を目指す人、起業したばかりの人は、この小方社長の言葉にぜひ耳を傾けていただきたい。

 

前編はこちらから・・・

インタビュアー

株式会社KSG
細川 和人