マクロミルはシステム開発を強みに成長したが、リサーチ業であるため一般的な知名度は低く、いわば「玄人好みのビジネス」(岡本氏)だった。一方、トレンダーズの場合、女性マーケティングや女性起業家の支援で先鋭的なイメージが形成され、メディアに取り上げられる機会も多く、事業規模に比して知名度が高かった。
だが、岡本氏がトレンダーズに関与した当初は、管理体制をはじめとした経営基盤に強みがあるとは言いがたい状態だった。そこで岡本氏はその水準を「高校野球からプロ野球に引き上げた」。すでに企業ブランドでは資産が築かれていたので、いかにして基盤を強化して、健康体な企業としてIPOに向かうか。この1点に集中したのである。
「業績はいわゆる“右肩上がり”で推移をするのが理想であり、それをめざすべきだが、環境の変化や競合状況などでそれを毎年維持することはときに困難である。しかし5年や10年の期間で見たときには、確実に“右肩上がり”の線を描いていなければならない。それは経営者として最低限の役割だ」。
同社の現状はどうか。2014年度の業績は減収減益で、売上高18億3900万円、経常利益1億5900万円、純利益8500万円だった。IPO2年後にして失速した。2000年に設立されて15年が過ぎたことも踏まえれば、いまや転換期に入ったといえそうだ。
取材・文/経済ジャーナリスト 小野貴史