社員の成長と企業の発展は相関関係にあるが、とくにベンチャー企業ではその関係が明瞭である。岡本氏も「ベンチャー企業の一番の原動力は人のバイタリティー。チャンスに対して『命を賭けます』という社員が組織にガソリンを入れてくれて、そこに火を点けることが最も重要だと思っている」と話す。
それは、背水の陣に追い込むような経験を積ませることでもある。「『打たれたら絶対にいけないが、投げ切れば必ず勝てる』というタイミングでマウンドに立たせることが、社員を成長させる」。野球にたとえる岡本氏の説明は、実態をイメージしやすい。
岡本氏の風貌には30代のような若々しさがあるが、来年1月に46歳になる。20代のときには達成したいことや欲しいものがたくさんあったし、何よりも自由を欲する気持ちが強かったが、年を重ねるにつれ、やがて絞られてきたという。今なお褪せることのない思いは、自分の心のままに自由に生きることだ。
「たとえ大金を積まれても、NOならNO。大切な仲間をいつでも助けられる自由も持って生きたいと思う」。
「自分の人生は自分で決めれば良い。自分の決めたことに強い意志を持って取り組めば2度のIPOだって夢じゃない」。岡本氏は、ソフトだが毅然とした口調で締めくくった。
取材・文/経済ジャーナリスト 小野貴史