前提として、EUで有価証券が一般に提供されるとき、つまりSTOを行おうとする企業は「目論見書」を提出しなくてはいけない。
公募を通じて資金を調達したい、あるいは市場で取引ができると認められた有価証券を持ちたいと望むほとんどの企業は、投資家に目論見書を提供する必要がある。
目論見書は、以下の内容を説明する法的文書である。
・会社の主な事業内容、その財務および株式保有構造
・発行されている証券および/または取引を認められている証券
これには、投資家が会社の証券(株式、債券、デリバティブなど)に投資するかどうかを決定する前に必要となる情報が含まれている。
EUは、指令2003/71 / ECとともに、2003年に目論見書に関する規則を導入した。これらの規則は、改正指令2010/73 / EUの採用により、2010年に大幅に改訂された。
EUの目論見書規則は、投資家が同じレベルの情報から恩恵を受けることができるように、すべてのEU諸国において適切かつ同等の開示基準が設定されていることを保証しする。これらの規則の下では、一度目論見書が1つのEU加盟国で承認されれば、それはEU全体で有効となる。
この規則は、投資家に対する最低限の保護がEU全域で同じ基準であることも保証する。
一方で企業にとって、目論見書は何百ページにも及ぶことが多い法的書類であり、制作に多大な時間と費用がかかる。企業にとって、特に小規模な企業にとって、コストと負担が大きくなる可能性がある。
欧州議会の指令2003/71 / ECの第三条というものが存在する。
この司令は、加盟国が目論見書の事前公表なしに、自国の領土内での公募をすることを許可してはならないと述べている。
欧州議会の指令2003/71 / ECの第3条
Directive 2003/71/EC of the European Parliament and of the Council of 4 November 2003 on the prospectus to be published when securities are offered to the public or admitted to trading and amending Directive 2001/34/EC (Text with EEA relevance)
ただし、有価証券が次の条件で発行される場合に限り、目論見書の発行は必須ではない。
(a)適格投資家のみを対象とした有価証券の提供。および/または
(b)適格投資家以外の、加盟国あたり100人未満の個人または法人に宛てた有価証券の提供。および/または
(c)投資家一人当たり少なくとも50,000ユーロの総対価で証券を取得する投資家向けの証券のオファー。および/または
(d)1口当たりの額面金額が少なくとも50,000ユーロに達する証券のオファー。および/または
(e)対価の合計が10万ユーロ未満の有価証券の申し出。その限度は12ヶ月間にわたって計算されるものとする。
ただし、各EC加盟国では、地域ごとに免除規定が適用されている。たとえば、エストニアでは、セキュリティトークンが上記と同じ基準を満たしていない場合、STO発行者は目論見書をエストニア金融監督局(EFSA)に登録する必要がある。
これら国ごとの免除と欧州委員会の免除の唯一の違いは、許可されている一般投資家の数と投資される金額である。これらの要素は、EC加盟国によって異なる。
さらに、「適格投資家」という用語には、「法人、国および地方自治体、中央銀行、国際および超国家的機関、特定の個人および適格投資家登録簿に含まれる中小企業」が含まれる。
・ヨーロッパで公募を行う場合は「目論見書」を作成する必要がある
・STOを行うためには目論見書を提出する必要がある
・コストと時間がかかる「目論見書」には、免除規定がある
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記事執筆
塚田愼一
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